京都の言い回し11 お茶は一杯だけで飲んで退散

京都の言い回しについて書くという話を知人に伝えたときに、初めに書かれるのではないか、少なくとも早いうちに書かれるのではないかと期待していると言われた言葉があります。

それは「ぶぶ漬けでもいかがですか?」「ぶぶ漬けでもどうどす?」です。これは見聞きしたことが多いようで、期待されるのも理解できることです。

ぶぶ漬けは京都ではお茶漬けのことで、米飯にお茶や出汁をかけたものです。

市販されているお茶漬けの素を使ったり、お茶漬けの素を使わずに本格的に料理の一つとして出すことはあっても、それはコース料理の中に初めから取り入れられているものです。

そのような作法がある「ぶぶ漬け」を、わざわざ食べますかと聞くのは、初めから用意がしていないわけで、充分におもてなしをしたのに、まだ帰らない、まだ食べたそうにしているという無作法な人に対して口に出す言葉です。

その意味は「そろそろお帰りください」という気持ちがあり、また帰ることを催促する挨拶のようなものです。それなのに、「いただきます」と本気で返すのは笑いものになるというぶぶ漬け伝説、京都あるあるの一つです。

「さっさと帰れ!」という意味合いで言われないように、「ぶぶ漬け」の言葉が出ないうちに、早々と帰るようにするのが肝心という話です。

同じ意味合いで使われるのは「お茶いりますか?」です。お茶を出されて飲んでいるときには「もう一杯いかがですか?」という言葉が出たら、これは「もう帰って」という意味であるのは京都の言い回しなので、一杯だけで退散するのが正解と言えそうです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕