他人の口の動きが“いっこく堂”状態になって見える

NHKの特集番組で人体が取り上げられ、体内の調整は脳だけでなく各臓器・器官も行っていることが紹介されてから、メディア関係者からの、これに関連する質問が増えてきました。特に多いのが雑誌記者からの質問で、記事を書くよいテーマに巡り合ったという感覚があるようです。そのために、いろいろな切り口を探していて、これまでになかった問い合わせが来ることも珍しくありません。
「脳が全身の働きをコントロールしていると思っていたが、そうでないとなると脳は何をしているのか」という質問もありました。何も脳がコントロールしていないということではなく、脳に関係なく働いているのは以前から知られていたことで、それが臓器から分泌・放出される物質によって起こっていることが明らかになってきたということです。このことによって脳の研究が進まなくなるのかということを聞いてきた人もいましたが、脳の研究はさらに進みます。中でも高齢社会の脳の研究は認知症だけでなく、相当に進められていくはずです。
高齢になると他人の話を聞かなくなる、自分のことしか言わなくなる、目も耳も衰えるから見聞きする機会が減るといった変化をするようになります。これは悪いことなのか良いことなのかということですが、日本メディカルダイエット支援機構の理事長は良いことだという考えを示しています。そう考えるようになったのは62歳になって、自分の脳の調整能力の変化に気づいたことがきっかけでした。
昔のテレビは映像と音声を別々に収録していたことがあり、映像と音声が微妙にズレて放送されるということがありました。BS放送で古い番組を放送しているときにズレに気づくことはよくあります。今では同時録画・録音なのでズレは生じないのですが、話している人の口の動きと言葉が微妙にズレていることがあります。それは脳の老化によるものと言われることがありますが、実は目からの情報と耳からの情報はズレて伝わってくるのは当たり前のことです。
伝達の距離も処理時間も異なっていて、音が先に伝わり、0.1秒ほど遅れて目で見た情報が伝わってきます。これはいっこく堂の腹話術の芸と同じ状態です。これは目で見える範囲の情報だけでなく、暗闇であっても危険を察知できるように早く音の情報を受け取り、反応できるようにするための仕組みです。この0.1秒のズレは脳の中で調整して同時に伝わっているように感じさせています。
この能力は若いときにはフルに働いていても、年齢を重ねると低下していきます。長年の慣れから低下に気づかないことも少なくありません。年を取ってから目の見えが悪くなり、注意力も低下して、言葉と口の動きにズレが生じていることに気づかないまま過ごしていることもあります。だから、年を取って、こういった能力が落ちてくることは不便や気持ち悪さを感じずに一生を過ごせるとしたら幸せなことです。
しかし、年を取っても注意力が大きく落ちず、口の動きと言葉のズレが気になって仕方がない、そのために言葉に集中できない、聞いているようで充分に聞き取れていないということにもなります。当NPO法人の理事長も、そういった一人で、どうやって打ち合わせや講習、講演などをこなしているかというと、他人の言うことはあまり聞かない、よく見ないようにする、言いたいことだけを言うといったことを心がけていると言い切っています。
目と耳の感覚のズレ以前に、もっと異常が起こっているのに、それに気づかないまま過ごしているだけかもしれませんが、今の能力、今の状態に合わせて、より良い結果になることを中心にしているとのことです。より良い結果というのは何を指しているのかというと、メディカルダイエットに関する講習に参加してくれて、そこで見聞きしたことを周囲に広めてくれる人のためになることです。