代謝と糖尿病13 診断後の治療不足の実態

厚生労働省が健康長寿の実現などを目指して推進した『健康日本21』では、2010年には糖尿病患者(糖尿病が強く疑われる人)を1000万人に抑えるという数値目標が掲げられていました。2011年に発表された『健康日本21』の最終評価によると、直近の実績値(推計)は約890万人と、目標値を下回ったものの、増加する結果となりました。

また、『健康日本21』では糖尿病合併症の減少(合併症を発症した人の数)についても発表されていて、糖尿病合併症で最も多い糖尿病性腎症によって新規に透析が導入された人の数では目標値として1万1700人を掲げたものの、直近の実績値では1万6414人と大きく増加する結果となりました。

この結果は、糖尿病患者が治療を受けていないことが大きく関係しています。推定されている糖尿病患者のうち、どれくらいの人が治療を受けているかを調べた国民健康・栄養調査(2012年)の結果では、受診しているのは男性の65.9%、女性の64.3%で、徐々に増えているものの、まだ充分とはいえません。この傾向は、今も続いています。

このように糖尿病になっていても通院しての治療を受けていない人が圧倒的に多いのは、糖尿病は初期の段階では自覚症状がない疾患だからです。

糖尿病の治療を受けている人のうち約85%は、健康診断によって糖尿病であることが指摘されています。それだけ糖尿病は気づきにくく、わかったときには病気が進行して初期段階と同じようには治せない状態になっていることがあります。

糖尿病は血液検査によって血糖値を測定すれば診断できる疾患です。そのため、まずは血液検査を受けて、自分の体の状態を知ることから、その対策が始まります。ところが、コロナ禍の影響で健康診断を受ける人が大きく減り、また医療機関に行く人も減っているので、以前よりよくない状況になっているは間違いありません。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕