高血圧は血管にダメージを与えて、動脈硬化を引き起こし、その先の脳血管疾患、心疾患(心臓疾患)の原因となることから厳重な血圧管理が求められています。血圧の上の数値(収縮期血圧)が135mmHg以上、下の数値(拡張期血圧)が85mmHg以上では高血圧と判断されるので、テレビコマーシャルの「130超えたら◯◯麦茶」という数字となっています。高血圧は問題とされているのに、低血圧のほうは問題にされないどころか、むしろ健康的な状態とされています。
低血圧は一般に上の血圧が100mmHg未満の状態を指しています。低血圧になるのは、脱水や甲状腺機能障害、パーキンソン病などがあり、一般には高血圧を合併すると言われている糖尿病も低血圧の原因になることがあります。高血圧は国際的な基準があるのに対して、低血圧のほうは基準がありません。だから、“一般的に”という表現が使われています。
低血圧の症状としては、めまい、ふらつき、倦怠感といった命に別状があるようなことではないと考えられていることから、慌てて治療するような症状ではないということで、放置されている現状もあります。
高血圧は塩分の摂りすぎや運動不足、肥満、動脈硬化、それに不摂生があげられていて、血管へのダメージが細い脳血管にも影響を与え、脳血管疾患(脳梗塞、脳出血など)だけでなく、脳の血流が悪くなることから認知症の要因ともされています。超高齢社会に突入した日本は、認知症が重要問題で、その解決策の一つとして高血圧対策があげられています。
低血圧も実は認知症に深い関わりがあるのですが、その割には「低血圧は問題がない」というような認識の人が多いことから、認知症にまで考えが及んでいないようです。その及んでいない人の中には医師をはじめとした医療関係者も多数含まれています。
高血圧が認知症の原因となっているのは、動脈硬化によって脳に送られる酸素の量が少なくなり、脳細胞の中のミトコンドリアでのエネルギー産生が低下するからです。エネルギーの発生量が少なければ、脳細胞の働きが低下するのは当然のことです。低血圧は血圧が低いために全身を巡る血流が遅くなり、そのために脳への酸素供給も低下していきます。脳の酸素不足という意味では、高血圧も低血圧も同じことなので、「低血圧は平気だ」というようなことは言えないはずです。