「脂肪を燃焼」という言葉が運動やダイエット使われるときには、脂肪のエネルギー代謝のことを指しています。代謝というと「代謝が盛ん」とか「代謝がよくない」といった体質の問題のように使われることが多いのですが、エネルギー代謝となると脂肪酸をエネルギー源として用いてエネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)を産生する科学の話となります。エネルギー代謝は全身の細胞の中にあるミトコンドリアの中のTCA回路の中で行われています。
ミトコンドリアは細胞内の小さな器官ですが、すべてを集めると体重の10%ほどにもなります。それだけ重要で、生命維持には欠かせない器官となっています。全身のミトコンドリアの中で“燃焼”が行われているだけにエネルギー量も多くなっています。1日の全体のエネルギーのうち70%ほどが基礎代謝ですが、基礎代謝の70%ほどが体熱産生に使われています。「70%×70%=49%」、つまり全エネルギー量の約半分が体熱のために使われているのです。
燃焼のためには熱が必要です。紙を燃やすだけでも200℃以上、油では300℃以上の熱が必要です。そんなにも体温が上昇することはなくて、最大の体温上昇でも42℃が限度です。アナログの体温計は42℃までしか測定できないのですが、それは42℃を超えるとタンパク質が変質してしまい、生きていくことができなくなるからです。
実際には脂肪は燃焼していないということで、あくまで燃焼はイメージでしかないということです。健康食品やサプリメントの表示では事実と異なることを言ってはいけないように法規制されています。また、運動系でもフットネスクラブなどで事実と異なることを言うと不当表示になるという法規制なのに、多くのところで「燃焼」という言葉が使われて広告宣伝されているというのが実態です。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)