「信じる者は救われる」という言葉は、信じて続けることによって救いが得られるという意味で使われていますが、何を信じるのかというとイエス・キリストです。イエスの言葉は神様の意思を伝えるということで、ひたすら信心を重ねることで救いが得られるというわけです。以前に『信じる者は救われない』という書籍が発行されたことがあります。「信じる者はバカをみる」ということを言う人もいますが、今回のテーマの「信じる者は足元をすくわれる」です。漢字では掬われるとなります。これは隙をつかれて失敗することをいいますが、本来は「足を掬われる」で、そこから変化して頻繁に使われているうちに日常語になったようです。
信じて一生懸命に尽くしたのに、思いもかけないところを攻められて、ひっくり返されるということは対人関係ではよくあることです。今回の話は対人関係のことではなく、いつもと同じようにテレビで取り上げられた健康ネタへの疑問です。
長寿の人が何を食べているのかは気になるテーマの一つです。1万人調査というのならわかるのですが、100人ほどに聞き取りをして、好きな食べ物のベスト3を紹介して、それが長寿に結びつくのかを解説するという以前からよくあるパターンの番組を目にしました。この番組はメディアのプランナーと一緒に見ていたのですが、長寿者は肉が好きで、トップは生姜焼きではなくトンカツでした。なぜトンカツがよいのかという解説の理由が豚肉にはビタミンB₁が豊富で、揚げてトンカツにするとビタミンB₁が溶け出ないので効率的に摂れるということでした。ビタミンB₁は水溶性ビタミンで、炒めるよりも揚げたほうが流れ出にくいのは確かです。衣がブロックしてくれるのはわかりますが、衣の中に揚げ油が染み込んでいることには触れていませんでした。
なぜビタミンB₁が長寿につながるのかの説明もありませんでした。解説した専門家は述べているのにカットされたのか、それとも解説をしないまま収録が終わったのかはわかりませんが、プランナーのツッコミは、そこではなく「トンカツを食べたから長寿なのか、トンカツを食べられる体質だから長寿なのか」というところです。
ここでいう体質は、身体が温かいとか冷えるといった東洋医学の体質のことではなく、胆汁酸の分泌量のことを指しています。脂肪は十二指腸から分泌される胆汁によって分解されます。若いときには分泌量が多いのですが、加齢によって分泌量が減り、脂肪を分解しにくくなり、だんだんと肉が食べられなくなっていきます。欧米人は歴史的に肉食を続けてきたので高齢になっても胆汁の分泌量は多くなっています。トンカツは肉の脂肪に、揚げ油の脂肪が加わっているのでピックアップした長寿者は胆汁が分泌しやすい人だったのではないか、という疑問の提示です。分泌が少ない人がトンカツを食べて、長寿になれるというわけではないという話です。
同じ番組の中で、長寿者はアイスクリームが一番好きだと紹介していました。これに対する解説は乳製品にはカルシウムが豊富に含まれているから。カルシウムを多く摂ると、どうして長寿になれるのかがわかればよかったのですが、それも番組の中では解説なしでした。
それでも著名な解説者が言うことだからと信じて、それを救いにしたい気持ちもわからないではありませんが、なんだか足元を掬われるのではないかというのがプランナーと一致したい感想でした。