医療費の出来高払い制度と定額払い制度を取り上げて、日米の医療制度の違いを前回紹介しましたが、定額払い制度というと、以前には日本においても高齢者の医療費は毎月の支払い金額が均一ということもありました。
しかし、超高齢社会になって、支払いの割合こそ優遇されているものの、高齢者もかかった金額に応じて支払い金額が上がっていく出来高払いになっています。
この変更が発表された官報を見て、ひっくり返りそうになったことを覚えています。官報には健康保険法の条文を掲げて、一文字変更と書かれていました。“額”が“率”に変更になったということで、定額払い制度が定率払い制度になったことを伝える内容でした。
高齢者が、どれくらい多くの医療費を使っているのかというと、厚生労働省の「日本人の生涯医療費」を見るとわかります。日本人が生涯に使う医療費は年々増える傾向があり、超高齢社会に突入してからは“高値安定”が続いています。最新データ(2019年)では男女平均で2700万円、男性が2600万円、女性が2800万円となっています。この結果は、女性のほうが多いのは長生きであり、年齢を重ねるほど医療費が増えることを示しています。この金額のうち、本人が支払うのは健康保険をかけている場合には、10〜30%ということになります。
1年間にかかる医療費のピークは70歳代で、全体の半分ほどは70歳以降に使われています。急激に医療費が増えるのは50歳代で、この段階の医療費を抑えることで医療費のピークを減らして、生涯の医療費を減らすことができます。
まだ医療費が大きくかからない時期に、予防のために取り組み、その取り組みとしての健康づくりにある程度の時間とお金をかけることが必要になるはずですが、予防の意識が日本人は低いことが指摘されています。その大きな理由としてあげられているのが、国民皆保険の制度です。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)