超高齢化が急激に進む中、自治体では増え続ける医療費をまかなうだけの収益が求められてきました。そのために地場産業を押し上げ、それを購入してくれる人を増やすことを目指して、まずは自治体がある地域を知ってもらい、来て体験してもらい、気に入ってもらえたら観光に訪れ、さらには移住して新たな働き手にもなってもらいたいと、広告代理店や旅行会社に随分とお金を使ったという例も多く見聞きしました。
外から入るお金を期待するのは当然のことですが、それと同時に出ていくお金を減らすことも考えて行動すべきだというのが“健康資本主義”の考え方の一つです。地域に高齢者が多いのは、「過去の経験の蓄積が豊富」という広告代理店的な謳い文句ではなくて、多くの医療費がかかっているということは、それを減らす活動があって、その上に外から収益を得る活動があるべきです。
高齢者が積極的に外に出て、活動時間を増やすことは肉体的にも精神的にも大きなプラスになります。認知機能の低下は、身体的に健康な状態が保たれていたとしても、要介護の対象になり、その状態は病気を増やす要因にもなっています。
積極的に外に出る機会を増やす方法として、ウォーキングは簡単に始められて、継続もしやすいことから採用されやすいものです。しかし、感染防止の観点から集団で歩くことは避ける風潮があり、ウォーキング大会も全国的に中止が相次いでいます。これは仕方がないことかもしれませんが、なぜウォーキングというと集団で歩くという発想になるのか、健康度を高めることよりも危険のほうが議論されてしまうのか、ということを考えるべきです。
日本のウォーキングは歩け歩け運動から始まり、日本ウオーキング協会が主管して、大規模な大会を全国各地で開催してきました。健康づくりのために歩こうというきっかけづくりにもなり、それなりの成果はあげられたものの、イベントとしての開催では医療費削減までを考えたウォーキングにはなりません。全都道府県に傘下のウオーキング協会があり、その下に各地域のウオーキング協会や歩こう会などの同好組織があります。そのメンバーは頻繁に歩いているものの、地域の健康づくり、医療費の削減による地域経済の活性化までを考えると住民が日常的に歩く意義を見出す必要があります。
私たちは、歩くことによる医療費削減という経済価値と、そこで得られた金額を次の世代の育成と健康づくりの資本とすることを健康資本主義の考え方から提案させてもらっています。