健康ウォーキング38 脳機能対策のウォーキング4

運動による認知機能の改善については多くの研究機関によって研究が重ねられ、運動の実践に役立てられています。引き続き、その成果を紹介します。
(3)サーキット運動トレーニングの認知機能改善
東北大学は、高齢者の比較対象試験によって、4週間のサーキット運動トレーニング(有酸素運動と筋肉トレーニングを30秒間ずつ交互に実施)が実行機能、エピソード記憶、処理速度など広範囲な認知機能を改善することを明らかにしました。
(4)計算しながらの歩行速度の低下と認知機能
東京都健康長寿医療センター研究所は、簡単な暗算などの認知的負荷がかかる課題を遂行しながら歩行した際に、歩行速度が遅くなる高齢者ほど嗅内野の萎縮が進んでいることを明らかにしました。
(5)ウォーキングのインスリン抵抗性改善で認知症を予防
東京大学の研究グループは、2型糖尿病のインスリン抵抗性がアルツハイマー病のアミロイドβの蓄積を促進することを突き止めました。アミロイドβは認知症の中でも最も多いアルツハイマー病の患者の脳に特徴的にみられるタンパク質です。2型糖尿病がアルツハイマー病発症のリスクとなることから、2型糖尿病でよくみられるインスリン抵抗性がアルツハイマー病の発症を促進する可能性が、これまでも予測されてきました。
研究では脳にアミロイドβが蓄積するモデルマウスを用いて、高脂肪食によってインスリン抵抗性を誘発させて、インスリン抵抗性による影響を比較と解析が行われました。その結果、インスリンの低下作用そのものではなくて、インスリン抵抗性発症の要因となる代謝ストレスがアミロイドβの脳内除去速度を低下させて、蓄積を促進することを示しました。また、糖尿病のモデルマウスの脳内ではアミロイドβの除去速度が低下することで、アミロイドβの蓄積が増加する可能性も明らかにされています。
インスリン抵抗性は、膵臓からインスリンが分泌されているにも関わらず、細胞がインスリンに反応しにくくなって、細胞にブドウ糖を取り込めなくなっている状態を指しています。インスリン抵抗性は食事制限によってブドウ糖の摂取量を減らすことによって改善していくことが指摘されていて、食事制限をすれば脳のアミロイドβの蓄積を抑制できることが指摘されています。インスリン抵抗性は有酸素運動によって改善することは多くの研究によって確認されていることから、認知機能改善のためのウォーキングが注目されています。