健康ウォーキング44 糖尿病の運動療法3

日本糖尿病学会の「科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン」の中から運動療法について前回に続いて紹介します。
◎糖尿病の運動療法の効果
2型糖尿病患者において心肺機能の低下は、心血管障害や死亡率に関連があると考えられている。運動療法が2型糖尿病患者の心肺機能に及ぼす影響についての研究のメタアナリシスでは、平均して最大酸素摂取量の50〜75%の強度の運動を1回約50分間、週に3〜4回、20週間行った場合、最大酸素摂取量は有意に増加(11.8%)したと報告されている。
さらに2型糖尿病患者は、インスリン抵抗性や肥満、高血圧、脂質代謝異常を伴っている場合が多く、運動療法によってこれらの異常が改善されるとともに血糖コントロールが改善する。8週間以上の運動療法を行った研究のメタアナリシスでは、有意な体重減少は認められないにもかかわらず、HbA1cは有意に改善(約−0.6%)したと報告されている。
また、HbA1cと心肺機能の改善には、高い強度の運動が有効であった。糖尿病の診断から早期の患者においては、運動療法を追加しても、食事療法による改善以上の効果は見られなかったとの報告もあり、運動療法による血糖値改善効果は、糖尿病の時期やコントロール状態によっても異なる可能性があるが、一般的には、糖尿病治療において運動療法は食事療法と組み合わせることにより、さらに高い効果が得られると考えられている。また、いわゆる「運動療法」のみならず、日常生活において身体活動量を増加させることも効果的であると考えられている。
1型糖尿病患者においても運動により血糖値は低下するが、運動の長期的な血糖コントロールへの効果は不明である。しかしながら、糖尿病患者は心血管疾患を生じるリスクが高く、運動によりこれらのリスクを減少させると同時に、生活の質を高めるなど血糖コントロール以外の効果が期待されるため、運動の強度が中等度以下の運動療法は勧められる。合併症がなく、血糖コンロトールが良好であれば、インスリン療法や補食を調整することにより、いかなる運動も可能である。
その他、糖尿病患者において運動療法は、圧反射の感受性を改善する。一方、血管の内皮機能や硬さに対しては改善するとの報告が多いが、脈波伝播速度は変化しなかったとの報告もある。また、血中アディポネクチン濃度に関しては、変化しないとの報告と、増加したとの報告がある。