口腔の健康状態と労働生産性の関連の研究(安達奈穂子医学博士:東京医科歯科大学助教)は、歯科健診を毎年実施している日本の企業の従業員712人を対象に、質問票調査、歯科健診、一般健診・特定健診データを用いて実施されました。
自記式質問票では、全身的な健康では以下の質問をしています。
労働生産性:「歯の不具合による遅刻・早退・欠勤」の有無、プレゼンティーズム(心身の不調を抱えながら仕事をしている状態)として「歯の不具合により仕事に集中できなかったこと」の有無、主観的健康観、健康関連QOL、メンタルヘルス、職業性ストレス、食習慣
口腔の健康:口腔関連QOL、口腔の自己評価、口腔衛生週間、歯科受診行動(かかりつけ歯科医の有無、定期的・継続的メンテナンス受診の有無など)
社会経済要因:学歴、世帯収入、職種、婚姻の有無、子の有無など
歯科健診では、歯式(歯の位置や欠損状態を示すための書式)、う蝕を経験した歯の数、歯周組織の状態
定期健康診断・特定健康診査では、性別、年齢、身長、体重、腹囲、血圧、血液検査、問診、生活習慣(喫煙、飲酒、食習慣)などを聞いています。
その結果ですが、「口腔の不具合による遅刻・早退・欠勤」があったと回答した6.7%は、労働生産性低下の有無であるアウトカム(本質的な成果)では、喪失歯、う蝕を経験した歯の数、口腔関連QOLが低くなっていました。
「口腔の不具合で仕事に集中できなかったことがある」と回答した9.1%は、う歯、喪失歯、口腔関連QOLが低くなっていました。
この結果から、歯の不具合による遅刻・早退・欠勤の有無と口腔関連QOLが低いこと、口腔の不具合で仕事に集中できなかったことの有無と、う歯、う蝕を経験した歯の数が多いこと、口腔関連QOLが低いことの関連が示唆されました。
〔健康ジャーナリスト/日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕