健康デザイン48 健康づくりは単純にはいかない

健康づくりのために実践することが一つだけであったら、悩まずに実施して、継続も簡単かもしれませんが、それだけで済むことはほとんどありません。生活習慣病の予防について食品の一つだけを増やす、もしくは減らすだけでよいなら誰でもできそうですが、生活習慣病は代表的なものでも高血圧症、糖尿病、高中性脂肪血症、高LDLコレステロール血症があげられ、それぞれ食事の対応が異なっています。

それぞれの主な原因とされる食塩、糖質、脂質だけを減らせばよいのかというと、食塩を減らしても血圧に影響しない人もいて、同じだけ糖質や脂質を減らしても身体に現れる結果も違ってきます。

糖尿病の治療というと、血糖値を上昇させるのはブドウ糖であるので、ブドウ糖が多く含まれる糖質を減らせばよいと考えられることが多い、というよりも、そのように主張して患者に指導している医師もいます。

血糖値を下げるだけであったら、糖質を摂らなければ下がるのは正しいとしても、それで糖尿病が治るわけではありません。糖尿病は膵臓から分泌されるインスリンが不足するか、インスリンは分泌されていても反応がよくないために、細胞がブドウ糖を充分に取り込むことができなくなる疾患です。インスリン不足になる原因は、ブドウ糖を摂りすぎて膵臓が働きすぎるようなことだけではありません。

インスリンは肝臓で脂肪酸を合成する働きがあり、エネルギー代謝に使われずに残った糖質、脂質、たんぱく質は肝臓で脂肪酸に代えられ、中性脂肪に合成されて脂肪細胞の中に蓄積されていきます。

日本人は歴史的に脂肪を多く摂ってこなかったために、膵臓がインスリンを多く作り出す能力が低くなっています。そのため脂肪を多く摂る食生活は膵臓を疲弊させることになり、インスリンの分泌量が減ることになります。

糖質だけでなく、脂質の摂りすぎも糖尿病に影響しているので、単純に糖質制限をすれば糖尿病が予防できる、改善できるというわけにいかないのです。
〔健康ジャーナリスト/日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕