食事と運動のバランスが特に強く語られるようになったのは2008年に特定健診・特定保健指導の制度が国によって始まってからで、そのバランスはエネルギー量が中心でした。
特定健診・特定保健指導は、いわゆるメタボの予防と改善を目的としたもので、メタボはメタボリックシンドロームを略した言葉です。内臓脂肪が多くなると血管へのダメージや生活習慣病が増えることから、内臓脂肪に着目した健康づくりが始まりました。
食事によるエネルギー源の摂取量が多く、運動による消費量が少ないと内臓脂肪が増えることになり、食べ過ぎ・運動不足の改善が求められました。これとは逆に、食事によるエネルギー摂取量が少なく、運動による消費量が多ければ内臓脂肪が減っていく、やせていくということで、出し入れのバランスという認識がされていました。
メタボであることが指摘されて、運動指導をされたとしても、これまで運動をしたことがない、運動は苦手という人は、食事量を減らすことを優先的に考えがちです。しかし、食事量を減らしても、なかなか内臓脂肪は張らず、空腹に耐えられずに以前と同様に(人によっては以前よりも多く)食べてしまう人がいます。
運動をしないと、やせていくときに脂肪だけでなく筋肉も減ることになります。脂肪の代謝の多くは筋肉で行われていて、平均的には全エネルギー消費の30%ほどは筋肉で消費されています。もちろん、筋肉が多い人と少ない人では違っていますが、多くの割合を占めていることは違いがありません。
同じ食事量(エネルギー摂取量)、同じ運動量であれば、天秤(てんびん)やシーソーのバランスが取れているということになりますが、実際には同じ食事量、同じ運動量であっても、実施のタイミング(どちらが先か)によって結果が違ってきます。
空腹時に運動をすると、血液中のブドウ糖が不足しているので、筋肉に蓄積されているグリコーゲンが分解されて、ブドウ糖として血液中に放出されます。その後に食事をすると肝臓でグリコーゲンに合成される量が増えて、血糖値を上昇させるブドウ糖が少なくなります。
血糖値が高いほど膵臓からインスリンが多く分泌されますが、インスリンには肝臓で脂肪を合成する作用があり、それが脂肪細胞に蓄えられる脂肪を増やすことになります。この仕組みがわかれば、運動をする意味への理解が進むはずです。
〔健康ジャーナリスト/日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕