健康のための食事の基本は栄養素の質と量が確保されていることです。それは臨床栄養の世界では絶対的な条件で、患者によっては医師の指示(約束食事箋)に従ってグラム単位で食品の量を調整することも行われます。
栄養素が足りていて、食事としても成り立っていれば、それでよいのかというと、そのようなことはありません。私の臨床栄養の師匠である山本辰芳先生(管理栄養士)は「文化性のない食事はエサである」という標語を病院の栄養管理室にも掲げていました。
おいしい食事、適温の食事(温かいものは温かいままに、冷たいものは冷たいままに)、嗜好にあった食事、食器や什器、食事環境についても、個人に合わせた食事の重要性を説いていました。
細かく対応しようとすれば、人手も費用もかかります。山本先生は現役時代に1000床以上の病院で、患者に提供する食事は細かな違いまで加えると100パターンにもなるという対応をしていました。
それに感動したわけではないのですが、山本先生が退職して研究所を立ち上げるときに研究員として加わり、関連する団体の広報活動を担当しました。山本先生は国立がんセンター(現:国立がん研究センター)病院、国立病院医療センター(現:国立国際医療研究センター)病院で栄養管理室長を務めるとともに、国立病院・療養所栄養士協議会の会長、日本栄養士会の理事長、日本臨床栄養協会の副会長などを務めていました。
臨床栄養は、食事をする人のさまざまな背景、一般に広まっている健康情報なども踏まえて対応すべきであり、正しい情報を見極めて、正しく患者に伝えることが重要であり、決して専門知識を押しつけてはいけないという、まさに健康リテラシーの基本を身につける機会をいただきました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕