医師の栄養知識が不足していることを「健康リテラシー4」で紹介しましたが、臨床栄養の師匠である山本辰芳先生(管理栄養士)は、その改善にも努められました。医師が栄養学を学び、病院の管理栄養士が栄養と関連する医学を学ぶ機会として日本臨床栄養協会が設立されたときに、副会長として医師と管理栄養士の情報交換を進めてきました。
会長は医師から、副会長は病院勤務の管理栄養士から選出するのが慣例で、管理栄養士にとっては副会長がトップの人事となります。
山本先生が、医師と管理栄養士が相互に学びあう臨床栄養のステージを作り上げることに尽力したのは、医師の栄養の理解が進まないと、入院患者だけでなく、通院患者の栄養改善も進まないことを実感していたからです。
しかし、医師の中にも管理栄養士の中にも、“罪滅ぼし”というようなことを口にする人は少なからずいました。それは、医療機関で栄養指導をして保険点数がつくのは管理栄養士だけで、医師は栄養指導をしても保険点数がつかない制度を国が作ったのは、山本先生が先頭に立って進めてきたからです。
医師になるための教育でも、医師になってからの自己研鑽の勉学でも非常に忙しいことから、医療現場で栄養指導が充分に行えるだけの知識を得ることは難しく、医師と管理栄養士が分担することで今の臨床栄養は進展してきました。
医師の養成教育で、栄養学が講座にない大学のほうが多い、講座があっても栄養学は必須でない、講座で学べるのは栄養不足と疾患の関係が中心で積極的な栄養摂取での健康増進の知識ではない、というようなことになったのは、医師が栄養指導をしても稼ぎにならない制度になったからという批判の声があることは承知しています。
制度を変えることよりも先にすることがあるとの認識で、医師への栄養教育の推進、疾患の予防のための栄養知識の普及に力を入れ、そのための研究活動と情報発信に取り組んできました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕