日本の栄養学の基本単位は80kcalとなっています。今現在、活動をしている栄養士は学校教育で80kcal単位で栄養計算をすることを学んでいるので、それ以外のことがあることも知らなければ、栄養指導を受けて食事をする人が理解しにくくて、計算しにくいことも思いが回らないかもしれません。
日本の栄養学は、もともとは100kcalが基本であったところが、戦後に肥料不足、飼料不足による成長の低下、食品のサイズが小さくなるということもあって、主食も副食も100kcalには不足する状態になりました。
そこで戦後の食糧難に対応するための緊急措置として、そのときの現状に合わせて2割減の80kcalが採用されました。ところが、食糧難が解消された後にも80kcalが採用され続け、栄養学を教える大学だけでなく、糖尿病などの医学会も採用し続けました。
これは戦後の食事が急速に洋食化して、エネルギーの過剰摂取が懸念されていたからです。そして、健康のためには“腹八分目”が推奨されるようになり、80kcalが当てはまっていたこともあります。
時代を経て、循環器系の学会などが食事の基本として100kcalを提唱するようになったものの、1単位が80kcalは変わらず、計算しにくいことから、栄養指導のとおりには実施するのが難しいという状況がありました。
そのような状況の中で登場したのが100kcalを一つの単位とする方法で、栄養業界では“ダイエットデザインハウス”と呼ばれました。三角形の紙1枚を100kcalとして、1日に指示されたエネルギー量に合わせて家の形にしていくというもので、発案者は慶應義塾大学病院の食養管理室の山下光雄先生(管理栄養士)でした。
山下先生は、私の臨床栄養の師匠である山本辰芳先生(管理栄養士)が代表のHDS(病院栄養管理)研究所のメンバーでもあり、私とともに主任研究員の名刺を持っていました。
80kcal栄養学に慣れた栄養士には100kcalは使いにくいものでしたが、栄養学に慣れていない人には理解しやすいものでしたが、人によって指示される摂取エネルギー量が異なることから三角形を組み合わせて家の形にするのが難しいこともありました。
そこで山下先生とともに開発したのが食品別に100kcalの紙をチケットのようにして、1日分のバランスのよい食品を配分して、これを1日で食べていくという方法にしました。この方法は、日本メディカルダイエット支援機構の食事バランスを自分で考えて実践していく方法として使い続けています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕