健康・火の用心1 手遅れになる前のアプローチ

日本には“火の用心”という素晴らしい文化があります。火事になってから消すことに力を注ぐだけではなくて、火事にならないように心がけ、見回りをすることの大切さを日本人は理解しています。江戸時代の町火消しのいろは四十八組(江戸市中)も深川本所十六組も、火事場で活躍するとともに、家事を起こさない火の用心の夜回りを繰り返していました。

ひとたび発生すると町中を焼け尽くすような大火事になって家屋敷ばかりか江戸城の天守閣も焼かれたほどで、さらに多くの命を奪うことにもなる恐れがあるからで、手遅れにならないようにすることこそが重要と考えられていました。

落語に「手遅れ医者」という演目があります。なんでも手遅れにしてしまう医者がいて、屋根から落ちた怪我人に対して手遅れだと言います。落ちて、すぐに連れてきたと言うと、「落ちる前に連れてこないと」と応えるという小噺です。

大事(おおごと)になる前に対処しないといけないということで、予防医学を示唆するような話です。その屋根から落ちる前に対処しようという考え方をするのが、私が付き合ってきた医療系学会の先生方です。それは日本未病学会を創設したメンバーで、2代目の理事長は慶應義塾大学医学部の教授を務めた循環器医でした。

大学病院に若手医師として勤めていたときに対応したのは心臓病の急患で、救急処置で命は救えたものの障害が残り、重度の障害者を増やすだけという結果から、予防医学に目覚めたということです。病院には予防医学という診察分野はなくて、特に予防が重要である高齢者を対象として、老年科、老年内科などを立ち上げた慶應義塾大学病院や東京大学病院の教授などが未病医学を推進させていきました。

その活動を近くで見てきて、また活動の支援をしてきて、これを病院以外でも実施できないかと考えたことが、後の「健康・火の用心」の活動へとつながっていきました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕