健康・火の用心27 あえて間違って使われる“天地無用”

健康づくりへの取り組みは、これまで議論しても行動しても進まなかったことから、外部の意見を求める、外部からノウハウを取り入れるということを選択する例が少なからずあります。“少なからず”どころか、健康づくりの結果を受けるはずの住民の考えよりも外部の力を評価して、それに従おうとする自治体や団体、地元企業などが目立つ地域が増えてきています。

健康づくりの成果の受け取り手の住民は、行政を上に置いた組織図では下に位置するかもしれません。しかし、住民の意見や意識が最も重視されて、それに支えられる実行者は、いわば“お神輿”のようなものです。

担ぎ手がいない、担ぎ手が喜んで集まってくるような状態でなかったら、お神輿は移動させることもできません。それでは、お祭りもできないわけで、やってみた割には満足できない、最終的な地域住民の健康につながらなかったということも、これまで数多く見聞きしてきました。

こんな状況で持ち出すのが“天地無用”という言葉です。この正しい意味を対話の相手がわかっていることを前提として持ち出しているのですが、一般的には半数以上が正しい使い方を知っていても、30%ほどは間違った解釈をしています。このことは文化庁の「国語に関する世論調査」の結果を見ても明らかです。

正しいのは「上下を逆にしてはいけない」ということで、先ほどの住民が上で、まとめる側が下ということを間違えてはいけないという意味で使われます。ところが、誤って「上下を気にしないでよい」という理解をしている人も一定数いるのです。

本当の意味を知っていて、わざと自分に都合がいいように誤用をする人もいて、自治体に健康づくりイベントを持ち込んだ広告代理店と、それと手を組んだ健康産業が、他で成功している方法、住民が健康になれば医療費が下がるということを言い出しました。

反対意見があっても、結果として住民の医療費が下がり、自治体の費用も減るのだから住民(上)を気にしないでよい、結果OKなら納得してもらえる、という理屈で押しまくっていました。

それこそ住民に選ばれた自治体の長(上)を気にしないで、“上から目線”での営業活動だったのですが、“天地無用”の考えが最終的に住民のためになるように正しく実施されることを、このことを経験して実感させられたものです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕