健康・火の用心32 立派な医師の“名前負け”

テレビ番組にも頻繁に登場している医師は、出版しても販売数が多くなり、その結果を受けて再びテレビ番組に登場するという、関係者にとっては好循環になっています。登場回数が増えるほど多くの人に支持されているという印象を抱かれることがありますが、中身が伴っていないのに支持されるということも少なくありません。

テレビ局はギャラを支払って解説をする医師を選んでいる、と思われがちですが、それは以前の話であって、制作費が大幅に下がっている現状ではギャラなしが原則で、診察を減らしてでも時間を作って来てくれる医師が使われます。

出演が宣伝になるクリニックの医師が多く、以前のように大学教授などが出演することは極めて少なくなっています。それでも医学博士や専門医を取得している医師が使われているのですが、一般にイメージされているよりも、医学博士も専門医も難しいものではありません。そもそも何を研究して医学博士を取得したのか、どんな分野の専門医なのかに触れずに、コメントに信憑性を持たせようとしている番組が目立っています。

これこそが“名前負け”の状態なのですが、その意味を勘違いして、「名前負けするような医師にコメントを」と言い出すテレビ関係者もいます。その場合の“名前負け”は「名前を聞いただけで気後れしてしまう」という誤った使い方です。

正しい意味は「名前が立派で中身が追いつかない」ということで、ここで紹介している医師のコメントは、こちらの意味のほうです。医学的なコメントなら、大学で勉強してきているので、専門外であっても一般向けには問題はないのかもしれません。しかし、医学よりも簡単と思われている栄養の話になると、医師は思った以上に理解が足りていません。

というのは医師養成大学82校のうち栄養学講座があるのは25校ほどで、そのすべてが選択式で、必修ではありません。しかも学んでいるのは栄養素の不足で発生する疾患についての項目がほとんどで、栄養摂取による健康面での影響は学んでいません。医師になってから一生懸命に勉強したのかもしれませんが、基本を学んでいないのでは正しい判断をして、正しい情報を伝えるのは難しいことです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕