健康寿命と平均寿命の差の意味

私どものセミナーに参加していた方がQ&Aの席で、「歩けなくなったことで、あと9年は生きられることがわかって安心しました」という驚きの言葉を発していました。こんな発言が出るのは、健康寿命を知っている人なら、なんとなく理解できるかもしれません。健康寿命は自立して自由に動ける期間のことで、平均寿命から健康寿命を除いた年月が自由に動けなくなった期間を示しています。
健康寿命の期間は自由に動ける時期で、そこからの不自由な期間は男性で平均9年間、女性で平均12年間となっています。女性のほうが長いのは、平均寿命が長く、自由に動けなくなってからも長生きすることと関係しています。
「あと9年は生きられる」という前向きの発言をする人は、積極姿勢の方で、呑気に考えられる人はストレスが少なくて、それこそ“長生きする”と言われるようです。9年間を言ったということは男性であるわけですが、自由に動けない状態になってから9年間は生きられるということを保証してくれる研究成果ではありません。あくまで平均的な話で、自由に動けることは身体的に健康な状態で、活動的に動けるということは運動量が増えて、血管に悪影響を与える血圧、血糖値、中性脂肪値、LDLコレステロール値を低く抑えることができることとなります。
動けなくなってから平均9年間ということは、歩けなくなった人は9年間よりも余命が短いこととなります。余命というのは今から死亡するときまでの期間のことです。
一生涯の長さは、生まれたときから決まっているものではなく、寿命に影響を与えるような自由に動けない、生活習慣病になった、生活環境が大きく変わって免疫が低下するというきっかけがあったときに、それを受け入れるような生活をするのか、それとも大きくプラスに転換するようなことをするのかによって、まったく違った結果となります。
膝の関節や軟骨を傷めたことによって、自由に動けなくなったことで、それを喜ぶようなことをするのではなく、動けなくなったことに危機感を感じて、健康寿命に影響すること、足腰の傷みによって動けなくなったこと以外に、高血圧、高血糖、高中性脂肪、高LDLコレステロールといった健康寿命に悪影響を与える数値を低めに抑えるように食事や運動に励むようにすることから取り組むべきです。
男性なら9年間、女性なら12年間という平均寿命と健康寿命の差を目指すのではなく、理想は平均寿命と健康寿命の一致、つまり自由に動ける状態で、何も不自由がないまま最期を迎える“ピンピンコロリ”です。もちろん、それが平均寿命の男性で約80歳、女性で約87歳と同じか、それよりも長いほうがよいに決まっています。まだ、充分に歩けるうちに、自由に行動ができるうちに、もっと健康寿命を長くするように活動的に過ごすのが大切だということになります。