健康寿命に影響する食事と運動の効果

健康寿命に影響する食事については「日本人の食事摂取基準」、運動については「健康づくりのための運動指針」が、ともに厚生労働省から公表されています。
身体活動のために必要となる摂取エネルギー量は、日本人が近年の中で最も食べていなかった戦後の食糧難の時代に比べると相当に食べている印象が抱かれています。終戦直後の昭和21年(1946年)の日本人の1日の摂取エネルギー量は平均1903kcalでした。戦後75年を経た現在、食べたいものはいくらでもあって、いつでも食べることができる時代であるのに、令和元年(2019年)の1日の摂取エネルギー量は平均1903kcal(男性2118kcal、女性1709kcal)と同じになっています(国民健康・栄養調査)。前年までは、むしろ少なくなっていました。
生活習慣病の患者が増えたのは、食べすぎによる弊害であると言われ続けてきましたが、食べる量が減っているのに太っている人が増えて、生活習慣病の人が増えるという、これまでの想定とは逆になっていることがわかります。
その理由の一つとして運動不足があげられています。1日の歩数をみても、厚生労働省が10年間の健康づくりの目標値として掲げた「健康日本21」(2000年/平成12年から10年間)を始める段階では、男性が約8000歩、女性が約7000歩となっていました。これより1000歩を増やす目標が示されましたが、10年後の結果では逆に800歩ほど減っていました。これを受けて実施された「健康日本21(第二次)」(2013年/平成25年から10年間)では、男性が1000歩、女性が1500歩を増やすことが目標として掲げられています。
国民健康・栄養調査(平成30年)では、歩数の調査も実施しています。その結果では、男性は6794歩、女性は5942歩と、目標の男性の9000歩、女性の8500歩と比較すると、男性で約75%、女性で約70%と、ともに達成率は大きく下回っています。
過食と運動不足による太りすぎは生活習慣病のリスクに直結します。糖尿病、高血圧、脂質異常症など肥満度が低いほどリスクが低下する疾患があります。糖尿病の場合には、BMI(Body Mass Index:体格指数)が1kg/㎡増加するごとに男性で1.3倍、女性で1.2倍リスクが高まることが指摘されています。成人期の体重増加は循環器病、糖尿病のリスクが高まり、過去5年間の体重変動は、女性においては10%以上増加した人は、体重増加が±3%以内の人に比べての脳卒中リスクが1.5倍上昇したことが確認されています。
その一方で栄養不足を伴うやせでは免疫が弱まり、感染症にかかりやすくなり、血管壁がもろくなり、脳出血を起こしやすくなることも知られています。
身体活動と非感染性疾患、うつ、認知症、運動器の機能低下のリスクとの間位には関連性がみられ、1メッツ・時/日(1日に2〜3分)身体活動が多くなるごとに、これらのリスクが0.8%ずつ有意に低下することが報告されています。身体活動量が高いと心臓病による死亡リスクが低くなり、糖尿病は身体活動が多い群は低い群よりリスクが35%低いことが示されています。