健康寿命は「日常的・継続的な医療・介護に依存しないで自分の心身で生命維持し、自立した生活ができる生存期間」のことを指していて、この考え方は2000年にWHO(世界保健機関)から示されました。これを受けて、厚生労働省では「日常生活に制限のない期間」として、行きたいところに自由に出かけられる期間、好きなことができる期間を健康寿命としました。健康寿命の考えが示されてから、寿命を延ばすことから健康寿命を延ばずことに国民的な目標が移ってきました。
WHOの世界保健統計(2020年版)によると、平均寿命が最も長い国は日本で83.98歳でした。日本の統計は2016年調査の結果で、男性が2位、女性が1位となっています。15年前の統計(2001年)から21016年にかけて、平均寿命は男性が78.07歳から80.98歳に、女性が84.93歳から87.14歳と大きく延びました。健康寿命は男性が69.40歳から72.14歳に、女性が72.65歳から74.79歳まで延びています。平均寿命と健康寿命の差は、日常の制限のある“不健康な期間”を意味していますが、この期間は男性では8〜9年、女性では12〜13年の開きがあり、近年は横ばいで推移しています。
不健康な期間に大きく影響するものとしては、要介護の状態があげられています。国民生活基礎調査の結果から、日本人の介護が必要になった要因は、認知症、高齢による衰弱、関節疾患、骨折が5割を占めていて、生活習慣病は3割、死因として最も多いがん(悪性新生物)は数%でしかありません。
がんによる死亡数は1981年に脳血管疾患を抜いて最も多くなり、その後は増加の一方となっています。2019年には全死亡数の27.4%ががんとなり、次いで心疾患(15.3%)、老衰(8.8%)、脳血管疾患(7.7%)、肺炎(6.9%)となっています。
要介護の原因は年代によって異なり、60歳代までは循環器病の割合が最も大きく、70歳代以上では徐々に認知症や骨折・転倒の割合が大きくなっています。また、高齢者では、さまざまな疾患を複合的に合併していることも多くあります。
このような不健康な期間に関連する疾患は年代によってさまざまで、健康寿命の延伸のためには発症のみならず再発、重症化についても広く予防する必要があります。