健康寿命延伸のための提言19 提言のエビデンス2飲酒1

国立高度専門医療研究センター6機関(国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立長寿医療研究センター)が連携して、研究成果として「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)」を公開しています。提言のエビデンスの解説(第1回)を紹介します。
飲酒は、さまざまな疾患との関連が指摘されています。日本人の男性を対象としたコホート研究で、1日あたりの平均アルコール摂取量(日本酒換算で約1合=純エタノール量約23g)で46g(日本酒換算で2合)以上の飲酒で1.4倍程度、69g(日本酒換算で3合)以上の飲酒で1.6倍、がん全体のリスクが上がることが示されています。この結果から、日本人の男性のがんの13%が、日本酒で1日2合以上の飲酒習慣によって説明されます。
日本の6つのコホート研究を統合して飲酒と死亡全体、死因別死亡との関連をみたところ、男性の死亡全体、全がん、循環器病死亡において23g(日本酒換算で1合)未満の飲酒では、リスクの増加はなく、また女性の死亡全体、心疾患死亡で46g(日本酒換算で2合)未満では、リスクが低下していました。
がんの中では、大腸がん、肝がん、食道がんのリスクが、飲酒によって着実に増加することがわかっています。大腸がんについては日本人を対象とした5つのコホート研究を統合した解析では、1日あたりの平均アルコール摂取量が23〜45g(日本酒換算で1合以上2合未満)、46〜68g(日本酒換算で2合以上3合未満)、69〜91g(日本酒換算で3合以上4合未満)と増えるにつれて、大腸がんのリスクも1.4倍、2.0倍、2.2倍と増加して、92g(日本酒換算で4合)以上の飲酒では3倍近くになることが示されました。
肝がんについての4つのコホート研究を統合したデータでは、それぞれのリスクは男性では1.1倍、1.1倍、1.8倍、1.7倍、女性では23g(日本酒換算で1合)以上で3.6倍のリスク増加が見られています。