健康寿命延伸のための提言20 提言のエビデンス2飲酒2

国立高度専門医療研究センター6機関(国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立長寿医療研究センター)が連携して、研究成果として「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)」を公開しています。提言のエビデンスの解説(第2回)を紹介します。
アルコール飲料を習慣的に摂取し続けると血圧は上昇します。介入研究(予防プログラムや治療法を用いた研究)では飲酒制限によって1〜2週間のうちに降圧が認められたと報告されています。メタ解析(複数の研究を統合して解析)でも飲酒制限の効果が示されていますが、降圧は1.5mmHgと小さかったと報告されています。自由行動下で血圧測定を行った研究では、アルコール摂取によって日中の血圧は低下していましたが、夜間の血圧は上昇したため、平均血圧の差はそれほど大きくはなかったと報告されています。
循環器病については、83の研究についてメタ解析した研究では、週100g(日本酒換算で4合)あたりの死亡リスクは全脳卒中で1.1倍、心不全で1.1倍、心筋梗塞で0.9倍であったと報告されています。1日に平均2合以上の過剰飲酒では心房細動罹患リスクがおよそ2倍と報告されています。
糖尿病については、国際的なメタ解析では、適量の飲酒であればリスクが低下することが示されていますが、多量飲酒ではリスクの低下も上昇も認められていません。その一方で、日本人を対象にした研究では、やせ型の人(BMIが22未満)に限って飲酒に伴う糖尿病の有意なリスクの上昇が報告されています。やせ型以外では、飲酒よりも太っていることでの糖尿病リスクがあり、飲酒による影響が明らかにされていないということです。また、過剰飲酒はアルコール依存性のリスクが報告されているほか、膵炎、アルコール性肝障害などとの関連も指摘されています。