健康寿命延伸のための提言30 提言のエビデンス3食事8

国立高度専門医療研究センター6機関(国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立長寿医療研究センター)が連携して、研究成果として「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)」を公開しています。提言のエビデンスの解説(第8回)を紹介します。
脂質を構成する脂肪酸には飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があり、飽和脂肪酸の割合が多い食品の例として牛、豚、鶏などの脂身や乳製品、卵が知られ、不飽和脂肪酸の割合が多い食品の例として魚油や植物油が知られています。不飽和脂肪酸は、さらにオリーブ油に含まれる一価不飽和(オメガ9系)脂肪酸と、魚や植物油に含まれる多価不飽和(オメガ3系、オメガ6系)脂肪酸に分けることができます。日本人が欧米人に比較して心筋梗塞が少ないのには、魚や植物油由来の不飽和脂肪酸を多く摂る食習慣があることが関係していると考えられています。
飽和脂肪酸の摂取は、循環器疾患の確立したリスク要因であるLDLコレステロールを増やすなど、血中脂質に影響を与えることが知られ、RCT(ランダム化比較試験)のメタ解析からは、飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸や一価不飽和脂肪酸に置き換えることにより、脂質異常や血糖コントロールに対してよい影響があることが明らかにされています。
しかし、飽和脂肪酸の摂取と循環器疾患との関連を検討した21のコホート研究のメタ解析では、飽和脂肪酸の摂取が多いグループでは最も少ないグループに比べて虚血性心疾患リスクは1.1倍、脳卒中リスクは0.8倍であり、いずれも統計学的に有意な関連は示されていません。一方で、飽和脂肪酸の摂取と脳卒中との関連については、特にアジア人を対象にした研究では最も多いグループで統計学的な有意なリスク低下が観察されています。