国立高度専門医療研究センター6機関(国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立長寿医療研究センター)が連携して、研究成果として「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)」を公開しています。提言のエビデンスの解説(第9回)を紹介します。
日本人を対象としたコホート研究では、飽和脂肪酸の摂取量が多いと心筋梗塞などの虚血性心疾患リスクは増加するという報告がありますが、脳出血や脳梗塞のリスクは低下することが報告されています。日本人を対象とした6つのコホート研究からは、飽和脂肪酸が最も多いグループ(中央値:1525g/日)では、最も少ないグループ(中央値:5〜10g/日)と比較して、脳出血や脳梗塞のリスクが16〜70%低下することが報告されています。
また、多価不飽和脂肪酸を多く含むナッツ類を週に4回(28g)摂取すると、虚血性心疾患の発症リスクが約20%低下することが報告されています。そのことから、飽和脂肪酸の一部を不飽和脂肪酸に置き換えるのが、虚血性心疾患の予防につながることが期待されます。
食事パターンでみると、肉類、バター、高脂肪乳製品の含有が高い食事パターンの群は、そうでない群と比べて、循環器病の死亡リスクが高いことが報告されています。肉の脂身や脂(牛脂、ラードなど)、揚げ物を控えて、大豆、魚、野菜、海藻、きのこ、果物を取り合わせ、穀類を摂るような食事パターンは動脈硬化予防につながると考えられています。
高齢者の中でも特に後期高齢者では、厳格な食事療法によって栄養状態の悪化を招くことがあります。日本人の食事摂取基準では年齢に関わらず、脂質からのエネルギー摂取量は、総エネルギー摂取量の20〜30%が目標量とされており、特に高齢者では脂質の摂取不足に留意する必要があります。日本人の食事摂取基準では、20〜30%の脂質からのエネルギー摂取量のうち、飽和脂肪酸が占める割合は7%以下とすることをすすめています。