国立高度専門医療研究センター6機関(国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立長寿医療研究センター)が連携して、研究成果として「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)」を公開しています。提言のエビデンスの解説(第11回)を紹介します。
日本食(和食)と呼ばれる日本人の食事は、一つの食品で説明できるものではなく、さまざまな食品・食材で構成されていて、健康を考える上で理想的な栄養バランスの食事ととらえられています。そのため、1つずつの食品ではなく、実際に摂取している食品の組み合わせの傾向を食事パターンとして考えることができます。
研究対象となった集団の食生活は国や地域によって異なるため、結果として研究によってさまざまな食事パターンと疾病の関連が報告されていますが、その中でも共通して健康によい影響、あるいは悪影響を及ぼす食事パターンがあります。肉食が多い国や地域は肉が影響している、肉食が少なく魚や野菜が多いところでは、その影響と単純に判断することはできないということです。
国際的によく知られている複合食の例に、DASH食と地中海食があります。DASH食(Dietary Approaches to Stop Hypertension)はアメリカのNIH(National Institutes of Health:国立衛生研究所)が提唱した高血圧患者のための食事療法のことで、その基本は野菜、果物、低脂肪乳製品をよく摂り、鶏肉以外の肉を減らし、魚を増やす、種実類や豆類も多く摂り、全粒穀類・粉を使用することです。
アメリカの介入研究によると、野菜と果物だけを多く摂取しても血圧の低下は確認されませんでしたが、DASH食を摂取すると収縮期血圧が11.8mmHg低下したとの報告があります。収縮期・拡張期血圧ともに、食塩の摂取量の多い群も少ない群も減塩すると低下し、DASH食を摂取すると減塩せずに低下し、減塩とDASH食をともに行うと、さらに低下したと報告されています。