健康寿命延伸のための提言54 提言のエビデンス9成育歴・育児歴1

国立高度専門医療研究センター6機関(国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立長寿医療研究センター)が連携して、研究成果として「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)」を公開しています。提言のエビデンスの解説(第1回)を紹介します。
母乳により母子ともに、さまざまな疾病のリスクが下がることが報告されています。
出産後になるべく母乳を与えることで、母親の糖尿病、高血圧や循環器病リスクが低下するとの報告があります。また、母親の乳がんリスクを低くすることも期待できます。日本人における疫学研究の系統的レビューでは、授乳は乳がんを予防する可能性ありと判定され、また国際的には授乳は乳がんをほぼ確実に予防するとされています。
乳児期初期の母乳栄養により、子どもの感染症や白血病、2型糖尿病のリスクが低下する可能性が示されています。一方で、生後6か月をすぎて完全母乳栄養を続けることの健康効果は示されていません。つまり、長期に母乳を与えることではなく、あくまで出産後半年ほどは可能な範囲で与えることがよいと考えられています。
胎児期や小児期の健康状態は、その後の成人期また高齢期といった生涯にわたる健康状態に影響を及ぼすと考えられています。母子手帳や家族からの聞き取りを通して、自分の成育歴、幼少期にかかった病気や受けた治療について充分に理解し、把握しておくことは、将来の健康を維持するためにとても大切です。小児期の疾病の長期的な影響については、今後、さまざまな研究により明らかにされていくことが期待されています。