国立高度専門医療研究センター6機関(国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立長寿医療研究センター)が連携して、研究成果として「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)」を公開しています。提言のエビデンスの解説(第3回)を紹介します。
早産で生まれた人は成人期の慢性腎臓病、統合失調症、循環器病のリスクが高くなります。また、低出生体重で生まれた人は成人期の高血圧、循環器病、糖尿病のリスクが高くなることが知られています。
最もリスクが低い出生体重は3.3〜4.5kgと考えられています。男性1,0141名と女性5,585名を対象とした研究では、男女とも出生体重が低いと虚血性心疾患死亡のリスクが増加することが確認されています。また、世界の49研究のメタ解析では出生体重が1kg増えるごとに糖尿病リスクは22%、虚血性心疾患リスクは16%、高血圧リスクは23%低下することが示されています。日本人を対象にした研究でも同様の関連が報告されています。
また、胎児期や小児期の社会経済的状況や健康状態は、その後の成人期や高齢期といった生涯にわたる健康状態に影響を及ぼすと考えられています。早産や出生体重が少なめで生まれた人や、幼少期に小児がん、心臓病などの重大な病気にかかっていた人は、そうでない人と比べると気をつけるべき生活習慣が異なる場合があります。そのため、母子手帳や家族からの聞き取りによって、自分の成育歴、幼少期にかかった病気や受けた治療について充分に理解することはとても大切です。
子どもの出生体重が下がる原因としては、妊娠適齢期の女性におけるやせの増加、高齢出産の増加、喫煙などが考えられます。出生体重が少なく生まれることの長期的な影響として、すでに日本人(成人)の平均身長の低下が報告されています。