国立高度専門医療研究センター6機関(国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立長寿医療研究センター)が連携して、研究成果として「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)」を公開しています。提言のエビデンスの解説(第3回)を紹介します。
食生活の質については、生鮮食品を販売する食料品店へのアクセスの良さなどの食環境の影響を受けると考えられています。生鮮食品を販売する食料品店へのアクセスの良さと認知症発症リスクの低下との関連も報告されています。
また、身体活動は、地域の建造環境や社会的環境の影響を受けることが知られています。具体的には、歩きやすさや、地域に公共交通機関や公園があること、また地域の治安が良いことなどが身体活動の増加につながる可能性があり、WHOは身体活動を増加させるための都市計画のガイドラインを公表しています。日本においても公園の近くに住む高齢者はそうでない高齢者に比べて頻繁に運動することが報告されています。さらに、一人で運動するよりも家族や友人と一緒に運動する高齢者のほうが、不健康の割合が低いことが報告されています。これは、運動を通じた人とのつながり(ソーシャルキャピタル)が健康に良い影響を与えている可能性を示唆するものです。
胎児期や幼少期の成育環境や健康状態は、成人期や高齢期に至るまでの生涯にわたり、健康に影響を及ぼします。例えば、幼少期に逆境体験(虐待やネグレクトなど)を受けた場合、死亡、肥満、精神疾患など、さまざまな疾患への罹患リスクが高まることが知られています。また、妊婦や子どもの受動喫煙は、早産や喘息のリスクになることが知られており、妊婦や子どもの受動喫煙機会を減らすための方策が必要です。