現在のベテラン世代は、60歳定年を目指して働いてきました。今回の改正による65歳定年への延長は、長距離走の目標として定めていたゴールが急に先に延ばされたように感じる人も多く、これに対してベテラン世代は、さまざまな反応があります。
「元気なうちは働きたい」という前向きな人がいる一方で、体力や気力の面で不安を感じている人も少なくありません。
60歳のゴールを目標にして、体力や健康度などと仕事の負荷を勘案して、仕事の内容やペースを決めてきたところが、急に5年先まで続けなければならない状況に対して、「無理がきかない」「体力が続くかわからない」という不安が生じるのは当然のことです。
これまでの職場で、同じように勤めるのであれば大丈夫ということではあっても、移動や再任用、経験のない仕事をすることになると、これまでにやってきた経験と知識が活かせないのではないかという不安も生じます。
また、年齢的には60歳を過ぎると家族(親などの)介護の問題も大きくなり、これまでのライフ・ワーク・バランス(仕事と生活の調和)のライフに占める介護の割合が大きな負担となることもあり、介護と仕事の両立ができるかわからないという不安も膨らんできます。
また、年金の問題も影響が大きく、現役世代でも実質賃金が生活費の上昇分を下回っていた期間が長らく続き、長生きすると老後資金が2000万円に達すると言われる中、どこまで働き続けなければならないのかという不安があり、さらに追い討ちをかけるのが健康面での不安です。
日本人の生涯医療費は約2800万円と膨大な額に達しており、その半分は70歳以降に使われています。男性の平均寿命が80歳とすると、わずか10年の間に1400万円が使われている計算になります。
このような状況も高齢者になってからの仕事の継続の不安を大きくさせる要因となっています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕