苦しくて仕方がないことは「地獄の苦しみ」と表現されます。死後の世界は誰も経験したことがないので「地獄のような苦しみ」と言うのが正しいのかと思いますが、仏教の各宗派が説いていることを見てみると、地獄といっても、どのレベルなのかということが思い浮かべられます。
地獄は一つではなくて、八大地獄に分けられていて、階層があります。最も下の深い階層は奈落で、“奈落の底”というのは最下層の最も下ということで、絶対に復活できない状態を指しています。
地獄は8層なのかというと、各階層に小地獄が16個ずつあり、16×8=128で、これに8個の大地獄を加えると136個にもなります。これだけ多いと、どこに自分が落とされたのかわからないので、どう喘いでよいのかもわからないという状態になります。
地獄の苦しみは、地獄に堕ちたら、そこから先は死ぬことができないので、現状を続けなければならないところにあります。生活面の苦しさ(お金がない、食べるものがないということ)が、ずっと続くなら、これは“地獄のような苦しみ”になるのかもしれません。
健康面でいうと、病気になり、治療費がかかり、収入もなくなるという状態になるようですが、この地獄と感じることは誰のせいなのかということを仏教では説かれています。
例としてあげるのは、仏教の各宗派の中でも地獄が存在しない浄土真宗の開祖の親鸞聖人が残した“自業苦”(じごく)という言葉です。これは自業自得の自業に苦を合わせたもので、自分が行ってきたことによって苦しむことを指しています。
自業自得は、一般には自分の行いによって悪い結果になることと考えられていますが、自分の行いの結果(報い)が自分に返ってくることを指しています。何も悪いことだけでなく、よい結果も自業自得です。
自分がやってきたことが実は正しいことではないことに気づいていても止めることができない、よい状態を続けたい、もっとよくなりたいという希望(欲望)があって、今の状態に満足できないことも“自業苦”とされます。
自分の苦しみが、本当に苦しいことなのか、それとも自分が作り出した苦しさなのか、そこを把握することから健康への考えからが始まるとの発想をしています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕