健康思想5 健康寿命の苦しみ

日本人の平均寿命は世界一です。これは世界1位の女性と世界3位の男性を合わせた平均値です。長生きをしても、ほとんど動けない状態、医療と介護の助けがなければ生きていけないような状態であっては仕方がありません。

目指すところは、健康で長生きの“健康長寿”で、これを象徴する言葉に「ピンピンコロリ」があります。これは病気に苦しむことなく、元気に長生きして、寝込まずにコロリと死ぬことを指していて、長野県体育学会の発表で使われてから有名になりました。

現在の平均寿命(2022年)は男性が81.05歳、女性が87.09歳ですが、これに対して“健康寿命”も延びています。健康寿命は医療と介護に頼りきりにならずに自由に過ごせる期間を指していて、平均寿命との差は男性が約9年、女性が約12年にもなっています。

男性は72歳、女性は75歳で健康寿命に達することになり、これを見ると日本は決して幸せな長寿社会ではないことがわかります。あくまで平均ではあっても、これまでの生活の結果が健康寿命に影響してくることから、もっと短い期間しか残されていないことも考えられます。

健康寿命というのは非常に響きがよい言葉ではあっても、平均寿命との差がわかると、健康寿命は苦しみが始まる時期という見方をしたほうがよいかもしれません。ただ、自由に動くことができなくなるということだけでなく、その後の平均寿命までの期間が長すぎることから、これまでの生活などを振り返り、後悔をし続ける期間にもなります。

高齢者の場合には、認知症のリスクが高まり、5人に1人が認知症とされています。認知症になって、後悔もなくなればよいのでしょうが、認知症にならなかったとすると後悔は最後の最後まで続くことにもなります。

こういったことを考えると、認知症は現在の日本人にとっては、むしろよいことではないかとの考えも浮かび上がってきます。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕