健康情報105 望ましい地域環境により介護費用が抑制できる可能性1

高齢化の進展により、要支援・要介護認定者数は増加し、2021年度から「介護費11兆円時代」に突入しました。健康長寿社会の実現と社会保障の持続可能性の確保に向けて、国や自治体、個人が負担する介護費用の適正化が求められています。

地域の環境が高齢者の健康に影響を及ぼす先行研究として、都市部において緑が多い地域に居住する高齢者にはうつが少ない、生鮮食料品店の多い地域では野菜・果物などの摂取頻度が高く、要介護認定が少ないなど、さまざまな知見が蓄積されてきています。

しかし、こうした望ましい地域環境に居住する高齢者で、その後の介護費用が抑えられるか、という課題は未検討でした。

千葉大学予防医学研究センターの研究チームは、近隣の生鮮食料品店、公園や歩道など8種類の地域環境と介護費用との関連について、国内7市町(岩沼市、柏市、中央市、名古屋市、碧南市、常滑市、武豊市)の3万4982人(男性1万6650人、女性1万8332人)の高齢者(平均年齢73.5歳)を2010年から約9年間追跡したデータを分析しました。

調査対象者は、2010年に日常生活動作が自立していた高齢者でした。

分析は、8種類の地域環境が自宅周辺(1km以内)にあると回答した者と、ないと回答した者について、その後、9年間の追跡期間中の累積介護総費用(円/人月)が比較されました。

8種類の地域環境は、先行研究に基づき、①運動や散歩に適した公園や歩道、②魅力的な景色や建物、③新鮮な野菜や果物が手に入る商店・施設、④気軽に立ち寄ることができる家や施設、⑤坂や段差など歩くのが大変なところ、⑥交通事故の危険が多い道路や交差点、⑦夜の一人歩きが危ない場所、⑧落書きやゴミの放置が目立つところにある、とされました。

そして、「たくさんある、ある程度ある、あまりない、まったくない、わからない」の5つの選択回答を得ています。「たくさんある、ある程度ある」を「あり」、あまりない、まったくない」を「なし」、「わからない」を欠損値として「あり」か「なし」に分類されました。

研究開始時の2010年時点の性別、年齢、等価所得、教育歴、婚姻状況、同居の有無、居住年数、うつ、主観的健康状態、高次生活機能(電車やバスでの外出、自分で食事が用意できるなど13項目)、受診状況、車使用の有無、外出頻度、歩行時間、人口密度、日照時間、降雪量の影響が統計学的に考慮されました。
(結果については次回に紹介)
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕