発達障害の自閉スペクトラム症がある子どものストレスについては、さまざまな調査が行われてきましたが、その母親のストレスについては、あまり行われてこなかったのが現状です。
障害児の母親は強いストレスを抱えていることは以前から指摘されていましたが、中でも自閉スペクトラム症児の母親は他の障害児の母親よりもストレスが強く、このことは世界的にも報告されています。
自閉スペクトラム症は生まれながらの特性であって、親の責任ではないと言われる一方で、周囲の理解が足りないために余計な期待感が寄せられることもあります。理想的な母親像に近づくことがストレスを高めることにもなるだけに、この理想な母親像の調査が期待されていました。
この調査に取り組んだのは北陸学院大学教育学部幼児教育学科と神戸大学大学院人間発達環境学研究科、テキサス大学健康科学センター・ヒューストン校の国際共同研究グループです。
自閉スペクトラム症児の母親を対象に「良い母親像」の調査を行ったところ、日米ともに子どもを導くことが最も重要と考える共通特性が示されました。アメリカでは子どものアドボカシー(権利擁護)者としての役割を果たすために自閉スペクトラム症について学び知識を得ることが重要視されていました。
これに対して日本の母親の場合には、子ども中心の視点から適切なサポートを提供することが特徴として現れていました。
調査はアメリカと日本の自閉スペクトラム症と診断された2〜12歳の子どもを持つ母親(アメリカ52人、日本51人)を対象にして、「良い母親であるとはどのような意味か」「自閉症を抱える子どもにとって良い母親とはどのような意味か」とインタビュー調査が行われました。
また、一般的な良い母親と自閉スペクトラム症児の良い母親の特徴についても質問をして、母親像をカテゴリー化しています。
調査の結果、日米とも子どもを導くことが最も重要な良い母親の特徴と考えていて、顕著な回答として「受容する」、「辛抱強い」、「理解を示す」があげられました。
自閉スペクトラム症児の母親では、アメリカは「導く」、「辛抱強い」、「理解を示す」、「子どもを擁護する」、「子どもがサービスと支援を受けられるようにする」が上位を占めていました。一方、日本では「導く」、「受容する」、「子どもをよく知っている」、「子どもに合わせる」、「辛抱強い」、「子どもの視点を重視する」の順となっていました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕