マウスを使った動物実験の結果というと、人間の試験結果と比べると低く評価されることもあるのですが、リスクについて検証する実験を人間で実施するわけにはいきません。また、人間にとって有益な試験であっても、リスクが隠れているかもしれないことは動物実験から始めるのが通常のことです。
妊娠中の喫煙のリスクについては、人間で試験をするわけにはいかないことであり、信州大学先鋭領域融合研究群バイオメディカル研究所(ニューロヘルスイノベーション部門/医学部分子細胞生理学教室)の研究チームの妊娠期にニコチンを摂取させたマウスから生まれた子どもの行動異常の解析も同様のことです。
この試験は、マウスの体の各部位の動きをとらえて、その動きを統合して行動パターンを自動で読み取るAIシステムの開発に成功したことで実現しました。
妊娠後期のマウスの飲料水にニコチンを混入して、出産するまでニコチンを持続的に摂取する環境下での飼育でした。
胎生期のニコチン暴露は注意欠陥・多動性障害の発症リスクが上昇することが知られていましたが、AIシステムによってマウスでも注意欠陥・多動性障害に特徴的な行動パターンを検出して、社会行動の異常などの自閉スペクトラム症に特徴的な行動異常があることも発見できました。
また、これらのマウスでは自閉スペクトラム症のホールマークとして注目されている成熟後海馬ニューロン新生の異常も見られたことから、妊娠期のニコチン摂取が生まれてくる子どもに対して発達障害の注意欠陥・多動性障害だけでなく、自閉スペクトラム症のリスクも高める可能性も見出されました。
マウスの行動解析ではAI解析システムで検出した結果と、研究者が手動で解析した結果が一致しており、AIによる行動異常のパターンの自動検出システムの開発が成功していると判定されました。
妊娠期のニコチンを摂取させたマウスから生まれた子どもは注意欠陥・多動性障害に似た行動異常をきたすことが知られていましたが、それ異常の知見は少なく、より詳細な解析をする余地が残されていたことから、AIを用いた行動パターンの検出システムは今後の活用が期待されています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕