高齢化、食生活の変化に伴い、糖尿病、高血圧、慢性腎不全などの生活習慣病患者は増加していて、患者本人の負担となるだけでなく、国民医療費への影響も考慮すると、その反応は急務を要しています。
塩分摂取は血圧を上昇させ、多くの疫学研究で、塩分摂取量と血圧の間には強い正の相関関係が示されていることから、血圧を適切にコントロールするためには塩分摂取制限は重要となります。
以前に比べて、日本の平均塩分摂取量は減少傾向になるものの、いまだに目標塩分摂取量である6g以下には程遠く、さらなる取り組みが求められています。
減塩に対する取り組みの多くは、「ヒトは食塩を好む」という観点から行われています。しかし、哺乳類では低濃度の食塩水は好む一方、海水を好んで飲まないように、ある濃度以上の食塩水を嫌うことが示されています。
塩の食行動は、低濃度塩味への嗜好性(アクセル)と、高濃度塩味への忌避性(ブレーキ)のバランスによって既定されると想定されますが、この忌避行動に注目した研究はほとんどありませんでした。
京都府立医科大学大学院医学研究科とハウス食品グループ本社の研究グループは、ヒトが高濃度の塩味を忌避する反応を定量的に評価する簡便な手法を確立して、慢性腎臓病の患者では塩辛いものを忌避する反応が低下していることを発見しました。
まず、健常者を対象に濾紙を用いた味覚試験を応用して、各種味覚の認知機能とともに高濃度塩味に対する忌避反応が調べられました。その結果、塩味、酸味、苦味に関しては刺激濃度を上昇させるほど、忌避反応を示す被験者が増加しました。一方で、約37.6%の被験者では、最高塩味刺激濃度(20%)でも忌避反応は示しませんでした。
次に、慢性腎臓病の患者を対象に同様の味覚試験を行ったところ、健常者と比較して塩味を認識できる最低濃度が上昇していて、塩味を感じにくくなっていることがわかりました。
さらに塩味刺激濃度を上昇させて忌避反応を調べたところ、78.6%の慢性腎不全の患者では最高塩味狙撃濃度に対して忌避反応を示さず、慢性腎不全の患者では高濃度の塩味摂取に対する抵抗感が減弱していることが示されました。
また、塩味に対する忌避している患者の背景を調べたところ、男性で入れ歯の患者は、より高濃度の塩味摂取に対する抵抗感が減弱する傾向が認められました。一般的に、女性のほうが男性より味覚が鋭いこと、口腔内の衛生環境が味覚に影響を及ぼすことが知られていて、これらに合致する結果と考えられています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕