特定健診で心血管疾患の高リスク者スクリーニングの目的で広く診断されているMetSは、腹部肥満、高血糖、血中脂質異常、高血圧を複数重ね持ち、虚血性心疾患、脳卒中などの動脈硬化疾患リスクが高まっている危険な状態です。
MetS診断基準は複数存在し、世界的に用いられるIDF(国際糖尿病連盟)基準、米国(NCEP-ATPIII)基準の他、日本では独自の診断基準で診断されています。
これらの基準の主な違いは、ウエスト周囲長を診断に必須項目とするか、構成各項目の基準値に男女差を設けるか、あるいはそれらの基準値自体の違いですが、国や人種別の基準値が必要かどうかなども含め、長年議論が続いてきました。
また、虚血性心疾患、脳卒中は、いずれも発症すると大きくQOL(生活の質)を低下させるにも関わらず、MetS診断基準による、両者を合わせた予測能を検討した報告はほとんどありませんでした。
さらに、MetS診断基準の各構成項目の基準値を、縦断観察に基づく心血管疾患発症予測に最適化した場合、MetSの心血管疾患予測性能が、どの程度改善するかも不明でした。
新潟大学大学院医歯学総合研究科の研究チームは、日本国内の18〜74歳の56万人の医療ビッグデータを分析して、MetS診断基準を構成する各項目(ウエスト周囲長、血圧、血糖、血中脂質)の基準値を、実際に心血管疾患(虚血性心疾患、脳卒中)を起こしたか否かの結果に基づいて再設定し、それによる修正診断基準を作成しました。
この新基準を用いることで、日本国内の現行基準では9割が見逃されていた心血管疾患の高リスク女性を5割程度スクリーニングできるようになり、見逃しを大幅に減らせることがわかりました。
ウエスト周囲長の基準値は。現在の「男性85cm、女性90cm」から「男性83cm、女性77cm」へ修正され、加えて従来はMetS診断に必須項目とされていたウエスト周囲長は、必須項目にしなくても、心血管疾患高リスク者のスクリーニング能力は変わらないことも明らかにされました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕