健康情報67 妊娠中の魚摂取と生まれた子の神経発達の関係

魚には、エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)として知られるn-3系多価不飽和脂肪酸が多く含まれています。n-3系多価不飽和脂肪酸は、脳や神経を形成するための必須の栄養素であり、胎児・幼児期から老年期まで脳機能の維持に重要です。そのメカニズムについても動物実験により明らかになりつつあります。

これまで、妊娠中に魚を摂取すると、生まれてきた子どもの神経発達に対して好影響があることが、いくつかの研究から報告されてきました。しかし、一方で妊娠中のお母さんの魚の摂取と子どもの神経発達には関連がないとする研究結果もあり、一致した見解が得られていないのが現状です。

富山大学医学薬学教育学部のグループは、妊娠中に魚を摂取したお母さんから生まれてきた子どもは、生後6か月時点と1歳時点において、指先で物をつかむなどの「微細運動」領域と、手順を考えて行動するなどの「問題解決」領域において、発達の遅れが少なくなることを報告しています。しかし、1歳以降の関連については明らかにされていませんでした。

子どもの発達の遅れは、3歳頃で顕著になると言われています。この年齢から、幼稚園などにおける社会生活も増えるため、日本では3歳児健診で発達の遅れに関するスクリーニング検査が行われます。

研究グループは、「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」のデータ(約10万人のうち有効なデータが得られた約9万人)を用いて、妊娠期のお母さんの魚の摂取量と、生まれた子どもの3歳時点における発達の遅れとの関連を調べました。

妊娠中のお母さんの魚の摂取量が最も少ない群を基準にして、魚の摂取量と子どもの神経発達が遅めの発生率を比較した結果、妊娠中の魚の摂取量が多い群では、特に「微細運動」「問題解決」「個人・社会」の3つの領域において、神経発達が遅めになる子どもの割合が少なくなるという関連が見られました。

一方、「粗大運動」の領域では、お母さんの魚の摂取量と子どもの神経発達の遅れとの関連は、見られませんでした。

これは生後6か月・1歳時点のデータを用いて行われた過去の調査結果と一致する結果であり、妊娠期の魚摂取の重要性が明らかにされました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕