斜視に関する疫学調査は、限定的な集団、年齢層、人種で行われており、国全体の調査などはされていないため、全体像がつかめていませんでした。
日本は国民皆保険制度を採用しており、ほぼ全人口をカバーしています。厚生労働省からレセプト情報・特定健診等情報データベースが提供されるようになり、日本全体の疫学調査が可能となりました。
斜視は両眼の視線がずれている疾患です。複視が生じたり、遠近感がつかめなかったり、日常生活に支障をきたすことが多くなっていますが、実際にどの程度の患者が存在して困っているのか、世界的に見ても全国調査を行った研究はなく、実際に行うのは非常に困難とされていました。
京都大学医学研究科、国際高等教育院、医学部附属病院のグループは、ほぼ全国民の病名等のデータが格納されているレセプト情報・特定健診等情報データベースを使って、斜視の患者数を調べ、日本の人口統計から有病率を算出しました。
有病率は2.154%(約50人に1人)で、年齢層別に見ると子どもと高齢者で多く、二峰性が示されました。学校検診で発見され、手術により壮年期で減るものの、加齢で新たに発生すると考えられました。
病型割合は、外斜視67.3%、内斜視26.0%、上下回旋斜視6.7%で、内斜視が最多である白人とは異なっていました。人種間の遺伝的な差異が一因である可能性が考えられます。
さらに、子どもと比べて大人では上下回旋斜視が多く(19歳以下1.4%、19歳以上10.2%)、加齢性の要素が示唆されました。全体像を把握することで斜視が国民病の一つであることが提起されました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕