心不全に対する薬物療法や非薬物治療は飛躍的な進歩を遂げてきました。その一方で心不全患者の死亡率は依然として高く、心血管死は世界各国において死亡原因の上位に位置し、公衆衛生上の重要な課題の一つとされています。
心不全患者数の増加は高齢心不全患者の増加に起因しており、高齢心不全患者に合併するフレイルが注目を集めています。
フレイルを有する心不全患者は、そうでない患者よりも予後が不良であるということは、これまでに多くの既存研究で示されています。また、これまで重要視されていた身体的フレイルのみならず、認知機能障害や社会的フレイルなど、フレイルという概念は単一ではなく複数のドメインから構成されるものとして認識することの重要性が提唱されています。
順天堂大学大学院医学研究科の研究グループは、これまでの試験結果を解析し、高齢心不全患者は多くのフレイルドメインを複数持つ患者が多いこと、また多くのフレイルドメインを持てば持つほど、その患者の死亡率が高いことを明らかとしてきました。
しかしながら、保有するフレイルドメインと心不全患者の実際の死因の関係は明らかでありませんでした。
そこで、これまで行われてこなかった高齢心不全患者の詳細な死因とフレイルとの関係について検討することを目的として研究が実施されました。
2016年から2018年の間に、国内15施設において急性非代償性心不全で入院となり、独歩退院した65歳以上の心不全患者を前向きに登録し、対象となった高齢心不全患者1181人の平均年齢は81歳、男性が57%、身体的・社会的・認知的の3つのフレイルドメインの合併率は、それぞれ37%・66%・56%でした。
今回の解析では、2年後データを統計的に解析し、合併するフレイルドメイン数が増えるに従い、死亡率が上昇する関係性は退院後2年までの間も維持されていることが再確認されました。
死亡した患者の死因を心不全死、心不全以外の心血管死、非心血管死のいずれかに分類すると、フレイルドメイン数の増加に伴う死亡率の上昇は主に非心血管死の増加によるものであることが判明し、それぞれのフレイルドメインは、いずれも心不全死ではなく、非心血管死と相関していることがわかりました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕