健康情報9 寝つくまでの時間は睡眠構造と身体の放熱により影響される

埼玉県立大学大学院の研究グループは、不眠症の基盤データとして健常成人を対象にして、入眠過程における主観的入眠潜時(本人が自覚する寝つくまでの時間)と体温・放熱、睡眠構造との関連性を検討して、研究成果を公開しました。

ヒト(人間)は睡眠中にも時間経過を認知する時間認知機能を備えていて、例えば一晩の睡眠時間が7時間であれば、本人の自覚する睡眠時間もほぼ7時間と、ある程度一致しています。ところが、一部の不眠症患者では主観的睡眠評価と客観的睡眠評価の乖離がある睡眠状態誤認に陥っています。

これは実際の客観的な睡眠状態と自覚する睡眠状態にズレが生じるものですが、睡眠状態誤認患者では、睡眠時間を著しく過小評価をするだけでなく、入眠潜時を過大評価することが報告されています。

この主観的な入眠潜時と入眠の関わりが深い体温の変化、放熱との関連を見た研究はほとんどなく、この研究が始められました。

対象となったのは健常若年成人28名(男性7名、女性21名)で、皮膚温と鼓膜温を連続記録して、手足と体幹の温度差から放熱の程度を示して、入眠指標が計算されました。

昼間に60分間の睡眠ポリグラフ記録を行い、総睡眠時間、各睡眠段階出現時間、睡眠効率などの睡眠構造と各周波数成分のパワー値が算出されています。

そして、睡眠前後にはアンケートを実施して、主観的入眠潜時、睡眠深度、熟睡感などの主観的評価を得ています。また、主観的入眠潜時と睡眠構造、各周波数成分のパワー値、DPG(手足の皮膚温と体幹の皮膚温の差)、主観的評価との関連が検討されました。

その結果、平均客観的入眠潜時は7.6分、平均主観的入眠潜時は13.7分と被験者の多くが入眠潜時を過大評価していました。また、主観的入眠潜時が短いほど消灯前のDPGが消灯後のDPGに比べて有意に高くなっていました。さらに主観的入眠潜時が短いほど、睡眠の深さや熟睡感に対する主観的評価が高くなっていました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕