健康情報94 歯周炎治療が心房細動再発を抑制

心房細動は最も頻度の高い不整脈で、心不全や脳梗塞、認知症の原因となり、健康寿命を大きく損なう可能性があります。心房細動には加齢や遺伝的な要因も関与しますが、肥満、高血圧、糖尿病、飲酒などの修正可能な危険因子を同定し、多職種が連携して是正することが重要となります。

歯周炎は世界で最も有病率が高い感染症であり、全身性の炎症を惹起し、動脈硬化、糖尿病、リウマチ、脂肪肝などの全身疾患に影響することが知られています。しかしながら現在、歯周炎は心房細動の危険因子とは位置づけられていません。

広島大学保健管理センター、広島大学大学院医系科学研究科歯周病態学、同循環器内科学の医科歯科連携チームは、心房細動に対するカテーテルアブレーション治療を受ける患者を対象とした研究で、歯周炎の定量化指標である歯周炎症面積(PISA)が術後の心房細動再発に関連することを明らかにしました。

さらに、PISAの高い(重度の歯周炎がある)患者では、術後3か月以内に標準的な歯周炎治療を行うことで心房細動再発が抑制される可能性が明らかになりました。

心房細動は日本国内に約100万人の患者がいるとされます。心房細動に罹患すると脳梗塞、心不全、認知症の発症リスクが上昇し、健康寿命が著しく損なわれます。

心房細動では、患者ごとに高血圧、糖尿病、肥満、飲酒などの「修正可能な危険因子」を同定し、多職種が連携して是正することが重要です。

広島大学病院で心房細動に対する初回カテーテルアブレーション治療を受ける患者288人を対象とし、術前に歯周専門医による歯周組織検査が実施されました。

研究では、PISAに着目して、前例でPISAを計測しました。治療適応のある患者には歯周炎治療を推奨し、希望者には術後3か月以内(ブランキング期間)に2回の標準的歯周炎治療を実施し、治療後にPISAを再検査しました。

術後の心房細動再発は12誘導心電図に加えて、24時間ホルダー心電図や長時間記録可能な携帯心電図を用いて外来でフォローアップしました。

解析の結果、術後に心房細動が再発した患者では術前のPISAが高値であり、受診者動作特性解析で心房細動再発を予測するPISAの最適カットオフ値は615m㎡でした。このカットオフ値を用いると、生存期間分析でPISA高値群は高い心房細動再発率を示しました。

288人中で97人が術後3か月以内の歯周炎治療を受け、治療によりPISAが大きく改善しました。術前のPISA高値群では、歯周炎治療を受けた患者は治療を受けなかった患者と比較して、心房細動再発率が低いという結果が得られました。

パーセンテージで表すと、歯周炎治療を受けた患者の心房細動再発率は16.5%であるのに対し、治療を受けなかった患者は28.3%でした。また、PISA高値群では、歯周炎治療を受けた患者の心房細動再発率は20.0%、受けなかった患者は48.4%でした。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕