偽る脳力11 肩書きに頼りたい心理状態

自分の強みを打ち出すときに、いかに多くの人を知っているか、どれだけ地位が高い人を知っているかを強調することがあります。それを嫌う人がいるのも事実ですが、人間は一人だけでは生きていくことができず、多くの人の関わりの中で力を発揮していくことを考えると、地位の高い人と数多く交流していることは本人にとっての強みになります。

また、その強みを活かしていくことは、社会に役立つことを進めていくための大きな力となります。そのために人脈を活かすことができるなら、それを作り上げた人は賞賛の対象にもなります。ところが、“人脈自慢”で終わっている人も少なからず存在しています。

この人脈を使った“名刺ジャンケン”なる遊びがあります。持ち駒の名刺の中からジャンケンのように出して、どちらが勝ちかを競うもので、出した瞬間には勝負がつかないことがあります。単なる肩書きの上下ではなく、社長に勝つ部長の名刺もあります。会社の規模や勢いなどで判断されるので、低い肩書きの名刺を出した人が、いかに優れた会社なのか、重要な役割をしているのかといった勝つために納得させる説明が必要になってきます。

単に、これまでの人脈を自慢する行為ではなくて、名刺ジャンケンをしても負けないように、さらに人脈を拡大する、強みを知るための交流や研究を重ねるという努力を重ねるきっかけにもなる“高尚な遊び”にもなっているのです。「偉い人を知っているから自分も偉いと」いう簡単なロジックではないのです。

このような人は少なくて、多くは誰もが知っている有名人、業界の大物の名刺をもらい、それを自分の力の裏付けにしようという気持ちが優っています。同じ名刺を持っていても、どのような関係なのかによって人脈の価値が大きく違ってきます。集団で名刺交換をしただけの関係なのか、名刺交換の後に深い付き合いをしてきたのか、その付き合いが世の中に役立つことなのか、といったことが重要なことになります。

名刺ジャンケンでも、同じ名刺が出されることはあるのですが、その場合にも付き合いの深さ、影響力の強さなどが勝負の分かれ道になります。

単なる肩書きの上下は、以前のように大きな影響力を持たなくなってきているということですが、組織の中で肩書きに頼りたいという気持ちは依然として残されています。肩書きが上の人に頼りたいという気持ちがあるのと同じように、組織の中でも上の肩書きになって組織の中で評価されたい、肩書きによってより大きな仕事ができるようになりたいという“寄りかかり”の期待感があります。

その気持ちを、そのまま表に出したような人がいる一方で、自分の気持ちを抑えて与えられた役職をこなしている人もいます。「役職が人を育てる」と言われますが、これは後者の人にこそ相応しい言葉であり、その多くは社会のために役立つ「偽る脳力」が高い人ということです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕