医師と管理栄養士は、医療機関において微妙な感覚の距離感があるまま仕事をしているとの話を前に書きましたが、その影響は患者だけでなく、メディアの世界も受けていて、その先の健康情報を受け取る視聴者や読者などにも及んでいます。
医療の世界にいる方には、専門分野で詳しいことだけを伝えてほしいと願っています。専門から外れたことは、どんなに質問をされても答えないというスタンスの方々(医学、薬学、栄養学などの専門家)と付き合ってきました。こういった専門家はテレビ番組側の要望に応えにくいところがあって登場の機会は少なくなっています。
逆にいうと、番組の主旨に合わせて話してくれる医師などは重宝されていて、専門分野以外でも平気で話をするところがあります。私が主に付き合ってきた方々は「そんな恐ろしいことはできない」と口にしていました。
専門分野以外であっても、相当に勉強をして専門分野の方々と同じくらいの知識があるなら別ですが、そのような人は少数派です。
専門知識があっても、少し違ったことには専門家と思えないような発言をする例もあり、そういった実態があったことからテレビ番組の裏監修をしていました。
これは登場してコメントする方や放送に乗せる資料の裏付けを確認することで、監修者が言っていることが正しいのかを判断して、間違っていたら資料やエビデンスを持って修正する役割です。その役割もスポットが当たらないことも、長くやってきた書籍のゴーストライターと同じようなものです。
資料で示されたものを正しく修正する、コメントで相応しくないところはカットしてもらうというのは、よくありました。収録した内容を変えることができない場合には、テロップの内容を変えて、そちらに引きつけておいてコメントに集中がいかないようにすることもしました。
さすがに生放送では出番がないかと思っていたら、放送後に録画を渡されて、その内容の確認をするという仕事もありました。内容に問い合わせや苦情がきたときに、誤魔化しや言い訳をするための文章作成のようなことで、これが使われたことも何度かありました。
専門家の方々の「偽る脳力」を見抜くこともあれば、放送後の言い訳として自分や番組スタッフの「偽る脳力」を高めることにもなりました。
しかし、できることなら後付けの説明で能力を発揮するのではなく、初めから確認させてもらえれば(台本のチェックなど)人に誇れない「偽る脳力」を高めるようなことにはならなかったかもしれません。
それが他のところに役立つ経験と知識になるなら、これは無駄ではなかったことになるのですが。それは、これからの活動が答えを出してくれます。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕