すべての情報を取り入れて、それを分析して結論を出し、行動しているつもりでも、実際には自分の判断で決めているわけではないことがあります。その理由として、さまざまな原因があげられるのですが、「偽る脳力」というテーマに沿って、脳の仕組みから考えていくことにします。
脳の構造を見ると、脳は左脳と右脳に分かれていて、左脳は論理、右脳は感性を司っていると説明されています。少しだけ詳しく見ていくと、左脳は言語、計算、理論などの論理的、概念的な思考を行っています。それに対して右脳は音楽、幾何学、発想などの芸術的な分野を担っています。
すべての機能が左右で分かれているわけではなくて、運動機能では左脳は右半身、右脳は左半身の動きを司っています。左脳に障害があると右半身の動きが不自由になるというように、脳の中央で左右が交叉しています。これは神経が延髄で反対側に交差しているからで、延髄が障害されると全身の機能に影響が出る理由とされています。
左脳と右脳は、意識と無意識という役割もしています。意識は自分が自覚している思考や判断のことで、無意識は考えることも判断もせずに行っていることを指しています。自分では、すべての行動を意識して行っているつもりでも、実は無意識のうちに行っていて、それを意識が後付けしていることがほとんどだとされます。
研究者によって違いはあるものの、無意識のほうが多くの役割をしていて、90%以上が無意識のうちに行われているとの研究報告もあります。
一つ例をあげると、野球の打席に立つバッターはピッチャーが投球をしてからスイングを始めていると思われがちですが、それではバットをボールに当てることはできません。当たったとしてもまぐれ当たり、ホームランになる確率は天文学的な数字とも言われます。
というのは、ピッチャーがボールを手から離して、ホームベースの上を通過するまでにかかる時間は約0.5秒で、バッターがスイングを始めてからボールを捉える位置までにバットが到達するまでに0.5秒以上かかります。目でボールを捉えてからスイングを始めたのでは当てることができません。
バッター自身は意識して打ちに行っているようでも、実際には無意識のうちにバットを振り出していて、当たったことを後付けで説明していると考えられています。
朝に目覚めてからのルーティン(寝具から出る、トイレに向かう、ドアのノブを回す、後処理をするなど)も、就寝途中で目覚めてほとんど意識がないままにトイレに行くことも、無意識によって調整されていることです。
このような無意識を意識することで、脳の働きをコントロールしていくことも「偽る脳力」として考えていることです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕