偽る脳力26 閃輝暗点になってわかったこと

脳の視覚の仕組みについて、視聴一致の調整能力について取り上げましたが、視覚情報が画像になるためには重要な条件があります。それは画像を映し出す後頭葉が働くために必要な酸素が充分に送られていることです。

後頭葉が酸素不足になると、バラバラに送られてきた視覚情報が正常な画像とならず、視覚の一部がモザイク状になったり、輝いて見える、一部が黒くなる閃輝暗点が起こります。前半の閃輝はモザイクや輝きのために見えにくくなる、暗点は黒くなって一部が見えないという状態です。

私の場合は視界にモザイクが現れて、モザイクの部分はよく見えなくなります。血流が低下することで急に起こり、今は1日に3〜4回です。モザイクが出ているのは長くて30分ほど、短いときには15分で終わるのですが、現れるところが視界の下側の少し左寄りなので、文字が読みにくくなります。

このような他の人には見えないものが見えるという状態は他の人にはわからないことで、閃輝暗点の体験がある人でも見え方や視界の困難さが違うので、なかなか理解してもらうのは難しいことです。

他の人に見えないものが見えるというのは、“怖い話”ではなくて自分だけの特徴のようなものですが、このことを経験していたことで役立つことがありました。岡山に2017年に移住してから、これまでの臨床栄養、運動科学の知識を活かすために“発達障害児の支援をする人を支援する”活動に取り組んできました。

発達障害には感覚過敏や感覚鈍麻が起こりやすく、視覚過敏では光や色、物の動きなどの目から入る刺激が過剰に感じられ、苦痛や不快感があって、生活に困難さが生じるようになります。これだけでなく、視覚情報処理障害によって文字の左右逆転、ゆがみ、にじみ、かすみなどが起こります。

このような状態があることへの認識不足もあり、認識して理解していたとしても、どのようなことが実際に起こっているのかは本人以外にはわからないことです。

脳科学と発達障害の研究を重ねていても、私にも実際の困難さはわからないことですが、視覚の困難さを抱えながら周囲に合わせ、常に気を使いながら生活することの大変さは理解できているつもりです。発達障害は、自閉症スペクトラム障害でも注意欠如・多動性障害でも周囲とのコミュニケーションを取ることが難しく、これに視覚の困難さが加わることによって、より困難さが高まっています。

その状況を周囲に気づかれないようにするために、自分の感情を抑え、なんとか周囲に合わせようとするために「偽る脳力」をフルに使うことの苦しさがわかるだけに、発達障害児に優しく対応しなければならないことを気づくことができました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕