脳を正常に働かせるためには、エネルギー源が必要です。身体を動かすために使われるエネルギー源は糖質、脂質、たんぱく質の3種類だけで、三大栄養素、三大エネルギー源と呼ばれています。
全身の細胞のエネルギー源となっているものの、ただ一つ脳だけは違っていて、脳のためのエネルギー源になるのは糖質のブドウ糖だけです。脂肪酸もアミノ酸も脳細胞に入ることができないため、ブドウ糖は脳の唯一のエネルギー源と呼ばれています。
脳は重要な器官であって、常に正常に機能するために、必要な成分以外は取り込まれない仕組みになっています。そのことは多くのメディアを通じて伝えられているものの、仕組みが明らかにされないと理解しにくく、健康の維持・増進のために言い聞かせようとしても、太りたくない、肥満と指摘されたくないという意識が優って、糖質を抜くようなことをする人も出てきてしまいます。
その仕組みですが、脳の細胞に酸素や必要な成分を運んでいるのは毛細血管で、脳の毛細血管には他の毛細血管とは違った特徴があります。それは血液脳関門と呼ばれる特別なゲートがあることです。血液脳関門は毛細血管の内皮細胞にあって、ここをブドウ糖以外のエネルギー源は通過できなくなっています。
ブドウ糖は糖質(ご飯、パン、麺類など)の中に含まれていて、胃で素早く消化されて吸収されます。脳の唯一のエネルギー源であることから優先的に取り込まれます。脳が疲れたときや集中力を高めたいときにブドウ糖が含まれた甘いものを摂ると脳の働きが高まるのは、ブドウ糖が脳に即座に取り込まれた証拠といえます。
ブドウ糖が脳の中で充分に働くことができる保持時間は15時間ほどとされています。19時に夕食を食べて、翌朝の7時に朝食を食べたとすると、その間の時間は12時間で、また3時間の余裕があります。ところが、朝食を抜くようなことをすると10時ころにはブドウ糖が不足した状態になります。
ブドウ糖が不足したからといって急に脳の働きが大きく低下するわけではありませんが、ブドウ糖があまり消費されないように機能が低下します。自動車にたとえるとガソリンが少なくなってきたときにはエンジンの能力が低下したまま走り続けるのと同じと考えることができます。
2時間のブドウ糖不足で急に倒れたり、脳の働きが大きく低下するようなことはないとしても、脳は全身の働きをコントロールする重要な器官です。その脳が毎日、2時間ほど正常に働かないことがあると、全身の健康にも影響が出てくるようになります。朝食を食べる習慣は、もちろん糖質を摂取することは、脳の機能や身体の健康状態を保持するためにも重要なことです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕