ブドウ糖は脳の唯一のエネルギー源であることがわかると、糖尿病の予防や改善のためにブドウ糖が多く含まれる糖質を減らそう、糖質を摂らないようにしようという考えは、生理学的にもいけないことだというのは簡単にわかることです。
ところが、医師の中には糖質制限を糖尿病の治療やメタボリックシンドロームの改善のために積極的にすすめている例も少なくありません。
なぜ糖質を摂らないといけないかというと、脳がブドウ糖を保持して充分に働くことができる時間は15時間ほどでしかなくて、それ以降はガソリン不足のような状態で、エンストの危機を抱えながら自動車が走っているのと同じような状態になります。
脳には1日に最低でも120gのブドウ糖が必要で、1時間あたり脳では5gのブドウ糖が使われます。糖質のご飯は炭水化物が75%ほどで、炭水化物は分解されてブドウ糖になります。ご飯なら260g(茶碗で2杯弱)は食べる必要があります。
これは脳に使われるエネルギー量が、全身のエネルギー量の20%として計算されたもので、脳を盛んに使う職種、ストレスが強くかかっている状態では25〜30%にもなります。もっと多くのブドウ糖の摂取が必要な人も多くいるのです。
糖質制限は、糖尿病の治療から発想されたものです。糖尿病は血糖値(血液中のブドウ糖の値)を測定して、一定以上であれば糖尿病と判断されます。そして、血糖値が基準値よりも低く保たれるようになると糖尿病ではないことになります。
血糖値はブドウ糖の摂取量に比例して上昇するので、飲食で摂るブドウ糖が少なければ血糖値は上昇しにくくなります。血糖値が高まらないことだけで治ったと判断されることもあるのですが、実際には治っているわけではありません。
糖尿病は血糖値が高くなりすぎたことで、膵臓から分泌されるインスリンが多く分泌されます。インスリンには細胞にブドウ糖を取り込ませる働きがあることから、血糖値が高いときにはインスリンは分泌され続けます。インスリンにはブドウ糖の取り込みだけでなく、多く摂りすぎたエネルギー源を肝臓で中性脂肪に変化させて脂肪細胞に蓄積させる働きもあります。
多くのエネルギー源を歴史的に摂ってきた民族はインスリンの分泌量が多く、膵臓も丈夫になっています。ところが、日本人は歴史的に低栄養で、エネルギー量が高い脂肪の摂取量が少なかったことから膵臓の働きが低くなっています。そのような状態で、多くのエネルギー源を摂ると膵臓は働き続け、限界に達するとインスリンの分泌量が急激に低下します。これが糖尿病の大きな原因です。
それだけに血糖値が下がったからといって、ブドウ糖が含まれるもの以外は多く食べてもよいというのは間違った指導であり、偽りを植えつけることにもなるのです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕