偽る脳力38 脳の機能を変化させる自律神経

脳が興奮状態になったときに、これを抑えようとしても、なかなか思ったようにはいきません。これは自律神経の特徴によるもので、その名のとおり意志や意識など他のことには影響されずに自律して働いています。

自律神経は、環境や身体の状況に応じて、本人の意思とは無関係に自動的に働き、体内を常に最良の状態に保ち続けるための神経です。生命維持のための呼吸、血液循環、体温調節、消化、吸収、排出、内臓の働き、免疫、生殖などの機能に関わっています。

暑いときに汗をかいて体温の上昇を抑えるのも、運動をしたときに心臓の鼓動を早くするのも、食後に胃腸の働きを活発にして消化・吸収を促進するのも、すべて自律神経が調整を行っています。

交感神経と副交感神経は正反対の働きをしていて、自動車にたとえると交感神経はアクセル、副交感神経はブレーキの関係です。

身体の活動を活性化させるのが興奮系の交感神経の働きで、緊張や不安などでストレスが高まっているときなどには、状況の変化に対応できるように、血管が収縮する、心拍数が増える、血圧が高まる、筋肉が緊張するといった変化が起こります。

それとは逆に、身体の活動を抑制させるのが抑制(リラックス)系の副交感神経の働きで、睡眠中や休息時、夕方以降などに昼間に活動した体の疲労回復、修復のために、血管が拡張する、心拍数が減る、血圧が下がる、筋肉が緩むといった変化が起こります。

脳の働きを高めるにはエネルギー代謝が重要で、代謝を高めるためには交感神経の働きが盛んになることが必要です。交感神経を活性化させるには副交感神経の働きが先に盛んになる必要があります。

副交感神経の働きを盛んにして心身がリラックス状態になると、その後は交感神経が活性化されます。心身ともにリラックスさせることで、交感神経の働きを自然に高めて、エネルギー代謝が高まります。それは脳のエネルギー代謝だけでなく、交感神経の働きが盛んになることによって全身の細胞のエネルギー代謝も高まっていくようになります。

自動車のアクセルを強く踏み込んでいる状態では、ブレーキを踏んでも効かないのと同じで、副交感神経の働きを盛んにするためには交感神経の働きすぎを抑えることが大切になります。現代社会は交感神経の働きを盛んにする環境に囲まれているだけに、副交感神経の働きを盛んにする、自然のうちにリラックスできる環境を整えることが大切になってくるのです。

そのことを知って環境を整えることが、自分の能力を発揮させることにもつながっていくのです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕